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経営者と支援者との「対話」から「本質的な課題」の発見へ(ロカベン活用の現場)

補助金虎の巻
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対話の様子

中小企業庁では、中小企業・小規模事業者に寄りそった支援のあるべき姿として、「経営力再構築伴走支援」を打ち出しました。

これは、経営者と商工団体・金融機関・専門家などの支援者※が対話を重ねることで、経営者自身が目先の課題ではない「本質的な課題」に気づき、納得したうえで課題解決に向けた「能動的な行動」をとることをめざした支援です。

このような伴走支援にあたって、経営者が支援者とともに「本質的な課題」を発見するためのツールが「ローカルベンチマーク(ロカベン)」です。今回は(一社)埼玉県商工会議所連合会広域指導員である中小企業診断士の黒澤元国氏に、ロカベンの特徴やその効果についてのお話をうかがいました。

中小企業診断士 黒澤先生

中小企業診断士 黒澤先生

ロカベンは、企業の現状把握・課題発見のツール

ローカルベンチマーク(ロカベン)は、経済産業省が作成・公開している、企業の「健康診断ツール」です。「誰でも・何度でも・無料で」使えて、企業の健康状態、経営状態をチェックすることができます。

ロカベンは、財務パートと非財務パートという2つのパートから構成されています。財務パートでは、直近3ヵ年の決算情報を入力すると「売上持続性・収益性・生産性・健全性・効率性・安全性」の6つの指標で、自社と業種平均を比較することができます。この結果から、「他社と比べて財務のどの部分が強いのか、弱いのか」「なぜ、このような状況になっているのか」を考えて、課題の発見につなげていきます。この辺りは、よくある財務分析ツールと同じですが、「誰でも・何度でも・無料で」使えるのが、ロカベンの良いところです。

ローカルベンチマーク

さて、ロカベンの最大の特色は財務以外の情報の分析、非財務パートにあります。非財務パートでは「業務フロー(業務の流れ)」、「商流(取引の流れ)」、「4つの視点(内部環境・外部環境)」という3つの切り口から自社の現状を把握して、いままで気づいていなかった自社の魅力や強み、そして課題を見つけていきます。一言でいえば、ロカベンは「企業の現状把握・課題発見のためのツール」です。詳しい内容については、ミラサポplusや経済産業省のページに掲載されています。

経営者と支援者との「対話」に、ロカベンを

企業の「健康診断ツール」のロカベンは、事業者と経営者とのコミュニケーションをサポートする「対話ツール」でもあります。
日々仕事に追われる経営者にとって、支援者との対話の時間をとることは大変です。
ロカベンを使えば、①業務フロー、②商流、③4つの視点という3つの角度、3つのアプローチから、支援する企業の現状把握に必要な情報を効率よく聞き出すことができます。

なぜかと言うと、ロカベンにはSWOT分析・3C分析・5フォース分析など、代表的な経営分析手法のエッセンスが含まれているからです。ぜひ一度、ロカベンのシートをダウンロードしてみてください。いろいろなフレームワークがバランスよく配合された「オール・イン・ワンの経営分析ツール」だということが分かると思います。
だから、ロカベンを使うと、経営分析に欠かせない情報をバランスよく収集することができ、企業の現在の姿を的確に把握することができるのです。

相談の様子

ただし、経営者にも支援者にも注意してもらいたいことがあります。それは、「ロカベンのシートに文字を埋めることを目的にしない」ことです。支援者はシートの項目を意識した「問いかけ」をして、経営者の話をじっくり聞いてください。経営者もできるだけ率直に話すようにしてください。
ロカベンのシートを順番に埋めていくことは考えずに、本音の対話を重ねながら、ロカベンを通じて気づいた様々な課題、本質的な課題について、経営者も支援者も一緒に考えていきましょう。
具体的なやり方については「ローカルベンチマーク ガイドブック(支援機関編)」に詳しく載っていますので、参考にしてください。

事業計画づくりは、ロカベンからスタート

支援の現場にいると、経営者から「補助金の事業計画を作成したい」という相談を受けることがあります。しかしその計画が、「補助金のための事業計画」になってしまったら、本末転倒です。

事業計画(経営計画)づくりは、企業の現状把握からはじまります。そこから課題を見つけて、設定した目標を達成するための取り組み、具体的な行動をまとめていきます。このような取り組みを支援するのが補助金であり、様々な支援制度です。そして、取り組みの前提となる「現状把握と課題発見のためのツール」がロカベンです。ですから、事業計画の策定にあたっては、ロカベンからスタートすると計画づくりがスムーズになり、より良い計画をつくることができます。

ロカベンを使って、経営者と支援者が対話を重ねていくと、いままで気づかなかった課題が見えてきます。課題が見つかれば、「どんな戦略をとればいいのか」「どのような取り組みをすれば良いのか」を考えることができます。
支援者の役割は、まず経営者とともに本質的な課題を見つけることで、課題解決のための経営者の自発的な取り組みをサポートするために、補助金や公的融資等の活用も含めた、適切なアドバイスをすることだと思います。

「業務フロー」から強みを見つけて、成長戦略を描く

繰り返しになりますが、ロカベンは、大変に優れた「現状把握と課題発見のためのツール」です。そのなかでも、企業の成長戦略のヒントになるのが「業務フロー」のシートだと私は感じています。

ロカベンの業務フローは、「企業が顧客に製品・商品・サービスを提供するまでの流れ」を「企画→開発→製造→販促→販売」のような業務(プロセス)に分解します。そして、それぞれの業務ごとに「差別化ポイント(強み)」を整理していきます。

自社のビジネスについて、業務のどの部分に強みがあるのかを気づくことができれば、その強みをいろいろな事業に活かして、成長戦略を描くことができます。私はこれを「強みの転用」と呼んでいます。いままでとは異なる新事業・新分野に挑戦する時も、業務フローにある「既存の強み」を活かすことで、競合他社との差別化を図り、競争優位を実現することができます。これは、事業再構築や新分野展開に欠かせない視点です。

業務フロー

「経営者だけ」で、ロカベンを活用するために

今回は、主に経営者と支援者の対話ツールとしてロカベンを紹介しましたが、ロカベンは、経営者だけでも(社内メンバーだけでも)、作成・活用することができます。

経営者一人で作成する時も、頭の中の支援者との「対話」をイメージして、自問自答しながら、シートに記載していくと作成しやすいのではないでしょうか。「ローカルベンチマーク ガイドブック(企業編)」には、ロカベンのシートに記載する項目についての代表的な質問例が掲載されています。ぜひ参考にしてください。

もしかすると、ロカベンのシートを初めて見た人は「書くことがたくさんあって、作成するのが大変そう」という印象を持つかもしれません。しかし、ロカベンはとても良く考えて作られており、一つ一つのシートの項目には意味があります。ロカベンを作成していると、先ほどお話しした、様々な経営分析のフレームワークがバランスよく配合された「オール・イン・ワンの経営分析ツール」であることが実感できるはずです。

また最初から完璧なロカベンをつくろうとする必要はありません。まず試しにロカベンを使ってみて、支援者のアドバイスも受けながら、それをブラッシュアップしていけば良いのではないでしょうか。きっと、いままで気づかなかった会社の魅力や強み、将来に向けての大切な課題が見つかると思います。
ミラサポplusの会員は、マイページ上に「活動レポート(ローカルベンチマーク)」としてロカベンの機能が提供されています。こちらもぜひご活用ください。

※「支援者」とは、小企業・小規模事業者の皆様をさまざまな立場からサポートする方々を「支援者」「支援機関」という言葉で表しています。
「支援者」は、税理士や中小企業診断士等の士業の皆様も含まれます。また「支援機関」は、国が設置した無料の相談所(「よろず支援拠点」)のほか、民間の機関、金融機関も含まれます。概要は、「支援者・支援機関を探す」からご覧になれます。

また、「認定経営革新等支援機関」は検索システムがあります。

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