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レストラン開業の準備段階から、支援者とともに事業計画を策定【支援機関とともに 税理士編】

補助金虎の巻
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「認定支援機関(経営革新等支援機関)」とは、国が経営の専門知識のある個人や団体を認定する制度であり、税理士・社会保険労務士・中小企業診断士などの専門家が認定支援機関として登録されています。

今回の「支援機関とともに」では、開業前の事業計画の策定から、開業後の月次決算、課題解決のアドバイスまで、税理士のサポートを受けながら、レストランの経営を軌道に乗せていった事例を紹介します。

りょうりとおさけ「ドゥ・クルール」
認定支援機関

小川裕右税理士事務所(兵庫県姫路市佃町82 リッチウォーク佃町1階東側)

支援企業 りょうりとおさけ「ドゥ・クルール」
企業概要 カジュアルフレンチとワインのレストラン
所在地 兵庫県姫路市二階町86
WEBサイト https://www.2couleurs.com/外部リンクはこちら

開業にあたって、支援者とともに事業計画を策定

ドゥ・クルールは、姫路市のフレンチレストラン。姫路駅から徒歩10分ほど、おみぞ筋商店街を北へ抜けると、まるでパリの街角にあるような若草色の店舗が見える。

有吉恒二氏と由美子氏の店主夫妻が、同店をオープンしたのは2013年10月のことである。シェフ、ソムリエとしてフレンチレストランに勤めていた二人が結婚を機に、「自分たちが行きたくなるお店」をつくりたいと考え、独立開業した。コンセプトは、酒飲みの酒飲みによる酒飲みのためのレストラン。シェフの恒二氏がつくる手軽に楽しめるカジュアルフレンチと、ソムリエの由美子氏が選ぶ料理にベストマッチするワインが人気である。

小川裕右税理士は、同店の顧問税理士。店主夫妻のつきあいは、開業前にさかのぼる。

小川税理士

「顧問先から、フレンチとワインの面白いお店を開業しようとしている夫妻がいるので、創業の相談に乗ってくれないかという話をいただきました(小川税理士)」

個人経営の飲食店で開業前の段階から税理士に相談し、顧問契約を結ぼうという店は珍しいと言う。小川税理士のクライアントも、飲食店はなかった。

恒二シェフ

「税理士の先生に相談しようと思ったのは、私は料理をつくることに、妻はワインを提供することに集中したかったからです。店舗の経営面については、専門家のアドバイスをしっかり受けながら、軌道に乗せたいと考えました。(恒二シェフ)」

開業にあたって、小川税理士は店主夫妻とともに事業計画の策定に取りかかった。まず店舗を経営していくうえで、必要な利益を出すための「損益分岐点※」を算出。この損益分岐点をクリアするために必要な客単価と客数を割り出した。そのうえで、姫路エリア内の競合レストランを調査し、マーケティングの視点も加味して、営業時間、休業日、ランチタイム、メニュー価格などを設定していった。
※損益分岐点とは、利益が出るための最低限の売上高

恒二シェフ

「事業計画書の作成は初めての経験でしたが、経営のあいまいな部分を数字にすることで目標が明確になり、開業後の不安がずいぶん軽くなりました。また事業計画にもとづいて「創業補助金」を申請し、採択されたことで、広告宣伝費等の初期投資を抑えることができました(恒二シェフ)」

レストラン 料理

レストラン 店内

月次決算・月次棚卸で、料理・ワイン等の原価を管理

開業して2、3か月は事業計画で掲げた売上目標を下回っていたが、半年ほど経つと口コミで「料理とワインが美味しいお店」との評判が伝わり、徐々に客足が伸びてきた。1年後には固定客もつき、事業計画の売上目標を2割上回ることができた。
同店の開業から現在まで、小川税理士は月1回の定期訪問を続けている。

小川税理士

「日々の仕入・売上は、由美子さんが会計ソフトに入力しています。訪問日には、月次決算の数字を見ながら、私がその時々の経営課題についてアドバイスしてきました。なかでも一番良く話しあったのが『原価率』です(小川税理士)」

もともとの開業動機が「自分たちが行きたくなるお店をつくりたい」だったことため、恒二さんの料理へのこだわりが強い。良い食材=高価格の食材を使うため、原価率が高くなりがちで、計画より損益分岐点が高くなってしまうのが課題だった。

恒二シェフ

「夫婦二人でお店を回しているので、原価について甘くなることもありました。小川先生から指摘を受けることで、シェフとしてのこだわりと経営者として視点のバランスをとりながらの経営を心がけてきました。それが8年間、なんとか続いた理由かもしれません。(恒二シェフ)」

同店の月次決算では月次の棚卸も行っている。個人経営でありながら、月次棚卸を省略しなかった理由が、同店の特色である「ワイン」にある。

由美子ソムリエ

「当店のワインは、料理にあうフランスワインが中心です。気軽に楽しめるものから、超高級ワインまでそろえていますが、なかには原価5万円以上のものあります。私自身ソムリエですから、ワインへのこだわりが強く、気になるワインを次々と仕入れて、小川先生から注意を受けたこともありました(由美子ソムリエ)」

と由美子氏は苦笑する。

小川税理士

「ワインは店の看板商品なので、高価なワインを仕入れても全く構わないのですが、ワインの売上の内容によって、その月の原価は大きく変わってきます。正しい粗利益率を計算するため、毎月棚卸するようにしています(小川税理士)」

ワインは同店の最大の棚卸資産であり、店内にはオーダーメイドで200本以上入るワインセラーがある。客は、このワインセラーを眺めながら飲みたいワインを選び、注文することができる。ワイン好きにとっては至福のひとときだと言う。

実は、小川税理士も店主夫妻とのつきあううちにワインが趣味になり、「ワインセラーを購入して自宅でワインを楽しむようになった」と笑う。

レジスター

ワイン

ワインセラー

夫婦二人、「生涯現役」でレストランを続けていきたい。

さて、新型コロナウイルスの感染拡大は、全国の飲食店に深刻な影響を与えた。同店も例外ではなく、緊急事態宣言中の売上は平時の3分の1ほどに落ち込んだ。

由美子ソムリエ

「時短営業もあり、まだお酒が出せない期間もあり、経営的には苦しい状態が続きました。ようやく最近、お酒の販売ができるようになり、お客様が戻ってきました。そのお客様を大切にしながら、お酒を楽しく飲めるお店づくりに努めていきます(由美子ソムリエ)」

由美子氏は、ワインのソムリエであるとともに、シェリー酒の公式ベネンシアドール、日本酒の唎酒師でもあり、フランス料理にあうシェリー酒や、姫路の蔵元から厳選した地酒もそろえている。今後は、料理とお酒のペアリングに力を入れて、セットコースなど、同店の強みをさらに活かしていきたいと言う。

恒二シェフ

「私はあと5年で50歳になりますが、そろそろ自分たちのペースを大切にした経営というのも考えていく時期になったと感じています。『自分たちが行きたくなるお店をつくる』という開業の原点に立ち、一人ひとりのお客様と向き合いながら、こだわりの料理やワインを提供していきたいと考えています(恒二シェフ)」

夫婦二人が生涯現役で、ライフワークとしてレストランを続けていくためには、どのような営業スタイルが良いのか。ターゲット、メニュー、客単価、空間づくりは、どうすれば良いのか、いまから少しずつ考えていきたいと恒二氏は語る。

小川税理士

「飲食店業界は新陳代謝が激しい業界です。そのなかで、お二人には長く続けてもらいたいと願っています。ただし、料理やワインにこだわりすぎて原価率が上がりすぎてしまうことは要注意ですね(小川税理士)」

と小川税理士は笑う。これからも月次決算・月次棚卸を続けて、良質な料理・お酒の提供と収益性のバランスを取りながら、二人のこだわりを大切にした店づくりを支援していきたいと語る。

相談風景

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