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補助金をきっかけに、課題・目標を設定し、冷凍焼成パン事業を拡大【支援機関とともに 商工会議所編】

働き方改革
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「認定支援機関(経営革新等支援機関)」とは、国が経営の専門知識のある個人や団体を認定する制度であり、商工会・商工会議所、金融機関、税理士・社会保険労務士・中小企業診断士などの専門家が認定支援機関として登録されています。

今回の「支援機関とともに」では、喫茶店向けのパンが主力だったパン製造卸売会社が、商工会議所の支援を受けながら、持続化補助金・ものづくり補助金などの補助金を活用し、最高級の冷凍焼成パンのブランド化をすすめていった事例をご紹介します。

株式会社小麦家
認定支援機関

各務原商工会議所(岐阜県各務原市那加桜町2丁目186番地)

支援企業 株式会社小麦家
企業概要 パン・焼菓子製造卸売業
所在地 岐阜県各務原市鵜沼朝日町1丁目127番地
ホームページ https://www.komugiya.co.jp/外部リンクはこちら

素材・製法にこだわった冷凍焼成パンの「ブランド化」

株式会社小麦家は、岐阜県各務原市でパンの製造・販売を行う企業である。1982年の創業時から、中京圏の喫茶文化のシンボルである「モーニング」用の業務パンを中心に製造販売してきた。

2012年、同社は各務原市に本社を移転。二ヵ所あったパン工場を集約し、この地に新工場を建設した。工場では、焼きたてのパンをショックフリーザーという最新の冷凍技術で瞬時に凍らせた、業務用の「冷凍焼成パン」を製造。冷凍されたパンを店舗でリベイク(焼き直す)すると、焼きたての美味しさが再現できるとのことだ。

同社が各務原商工会議所の会員になったのは、各務原市移転後の2015年。入会して間もなく、所和彦経営指導員は森山常務から相談を受けた。

所経営指導員

「補助金でホームページやカタログを制作して、冷凍焼成パンの販促をしたいとのことでした。しかし『補助金ありき』の支援はしたくありません。補助金を活用して、解決する課題を明確にするために、経営者と膝づめで対話したいと思いました。(所経営指導員)」

同社の社長(当時専務)である吉村学氏は、海外で修業したパン職人でもある。対話を重ねるなかで、吉村社長には「最高級パンで人々を喜ばせたい」という理念があることが分かった。冷凍焼成パンについても、素材と製法にこだわった最高のものを作りたいとの思いが伝わってきた。

森山常務

「所さんからは、社長がめざす当社のあるべき姿と、現状のギャップを埋めるための課題を一つ一つ洗い出していこうと言われました(森山常務)」

同社のめざす姿から、冷凍焼成パンのコンセプトを「料理とパンのマリアージュ」、一流の料理にあうクォリティのパンとした。そして、コアターゲットを既存顧客の喫茶店とは異なる層、高級レストランやホテル等に設定した。これに基づいてブランディングを行い、ホームページやカタログを制作した。

また社内の意識も変えるために、専門家派遣制度を活用して、料理研究家を招き、料理とパンとの関係について学ぶ機会をつくった。

打ち合わせ

小麦家 パン

小麦家 webサイト

現場の生データから現状を把握し、課題を見つける。

同社のめざす姿と現状のギャップを埋めるためには、製造工程の改善も欠かせない。支援にあたって、所経営指導員は現状の正確な把握をすべきだと考えた。

所経営指導員

「「私のモットーは『現地・現物・現認』。現場の生の数字から、一つ一つ課題を抽出していきます(所経営指導員)」

森山常務を中心とする社内メンバーとともに、工程ごとの問題点を「見える化」し、課題を洗い出した。そのために、工程ごとの不良品発生状況を日報から集計したり、ストップウォッチで工程ごとに作業時間を測定したりすることもあった。その結果、パン生地を寝かせる工程がボトルネックであることが分かり、「生産能力向上」に関しては、ここが設備投資のポイントであることが明確になった。その後は経営指導員と対話を重ね、設備投資の優先順位を明確化した。

また、製造工程の改善にあたって、同社が最もこだわったのがパンの「品質」である。

森山常務

「当社は、フランスの伝統製法『低温長時間熟成法』により、小麦本来のうまみを引き出しています。工程の効率化と製法のこだわりを同時に実現することに知恵を絞りました(森山常務)」

2016年、「MAISON DE FROMENT(メゾン ド フロマン)」のブランドで、同社は高級冷凍焼成パンの販売を開始した。そのクォリティは、一流の料理人たちから高い評価を受け、「レストラン・ホテル・レジャー施設などの新しい顧客の獲得につながった」と言う。

小麦家 工場01

小麦家 工場02

補助金をきっかけに、事業計画の作成能力が高まった

冷凍焼成パンの事業展開にあたって、同社は様々な補助金を活用してきた。2016年・2017年の持続化補助金でホームページやカタログを制作。設備投資計画にしたがって、2018年は品質向上のための焼成設備を、2019年には生産効率を高めるために、パンを寝かせる工程の設備を導入した(いずれも「ものづくり補助金」を活用)。コロナ禍で飲食店向けの冷凍焼成パンの売上が激減した2021年には、事業再構築補助金を申請・採択された。

補助金の申請にあたっては、事業計画書が欠かせない。同社では、商工会議所のサポートを受けながら、森山常務を中心とした社内プロジェクトチームが、事業計画書を作成している。

所経営指導員

「支援当初は一緒に現状を把握分析し、問題の層別と課題設定等をサポートしてきました。しかし現在は、社内で課題と目標を設定して、精度の高い事業計画を作成できるようになっています。(所経営指導員)」

補助金の事業計画書では、現状を正確に分析し、課題を見つけ、目標を設定し、課題解決のための補助事業の効果を具体的な数字で表す必要がある。社内でこのような事業計画書を作成し目標管理を進めることで、経営力が高まり、それが確実な売上の伸長につながっているのではないかと、所経営指導員は言う。

2019年新事業として、同社は直営のベーカリー「エスプリ」を出店した。コロナ渦にあっても2021年に2号店、2022年に3号店と出店し、パン職人の吉村社長が徹底的にこだわった付加価値の高いパンを提供している。

森山常務

「エスプリの目的の一つは、最高級のパンを提供することで、小麦家自体のブランドを高めることです。『エスプリのパンは、価格は決して安くないが、オリジナリティあふれるパンで美味しい』という口コミが広がり、その効果は少しずつ表れています(森山常務)」

めざすのは、パン職人の目標になるようなパン。素材・製法にこだわった冷凍焼成パンを通じて、パンのイメージを変え、さらにはパン業界も変えていきたいと、森山常務は言う。

相談の様子

打ち合わせ

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