小規模企業のみなさま
- 2020年11月18日
- その他情報
- 最終更新日:2020年11月18日
小規模企業のみなさま
新型コロナウイルスの感染拡大により、先行きが不透明な状況が続いています。
このようななかで、小規模企業がどのような姿勢・考え方でコロナ時代に対応するべきかについて、(独)中小企業基盤整備機構で中小企業支援アドバイザーとしてご活躍され、全国の小規模企業経営者と親交を深めてきた、(株)アテーナソリューション代表取締役の立石裕明氏とお話をいたしましたので、みなさまの経営のヒントにしていただければ幸いです。
※不定期に5回シリーズで配信させていただく予定です。
(中小企業庁 稲垣)
まず、「利益」を決める
前回、紹介した「立石流かんたん資金繰り表」では、あらかじめ「役員報酬(経営者給料)」を書き入れるよう紹介しました。
この理由は、多くの小規模企業の経営者が「会社のお金」と「個人のお金」をいっしょくたにしているからです。
同じ財布で管理しているようなもので、これも小規模事業者が「どんぶり勘定」になる理由となっています。
もちろん、私も小規模事業者の実態を知っていますから、ある程度、仕方がないことであるのは理解しています。
自分が出資して起こした事業ですし、借入金は個人の連帯保証がついていたりしますから、会社のお金も個人のお金も同じと言えないことはありません。
ただし、「会社のお金も自分のお金も同じ」と考えてしまうのはリスクを孕んでいます。
「事業の利益が出たら、その利益が自分の給料」としてしまう人が多いからです。
これはつまり、「利益が出なかったから給料は取らない」という意味でもあります。
そして、実際はこのパターンが実に多い。むしろ、まともに給料を取っている人が少ないとすら思えるほどです。
これでは、何のために事業を営んでいるのか、わかったものではありません。
経営の苦しさは、そのまま生活の苦しさ、人生の苦しさにつながってしまいます。
計算式を変える
繰り返しますが、私は「事業の利益=自分の給料」である小規模事業者の実態を否定していません。
小規模事業者の現実として、仕方がないことです。
では、どうすればよいかというと、その「利益」についての計算式を変えることです。
通常、利益は次のように計算されます。
【売上−経費=利益】
この計算式では、売上に対して経費が多すぎた場合、利益(≒自分の給料)が削られてしまいます。
そのため、次のように計算するようにしましょう。
【売上−利益=経費】
まず、利益(≒自分の給料)を決めて、売上から差し引くことで、使える経費が明確になるわけです。
これなら、ちゃんと「役員報酬(経営者給料)」を取りながら、事業を営んでいくことができます。
計算式を変えることで起きる変化
小規模事業者にとって、経費は大きな問題です。
大幅な売上アップが望めない場合にはなおさら、経費をいかに圧縮するかが利益(≒自分の給料)額のカギとなります。
ところが、先に利益(≒自分の給料)を決めておくと、必然的に使える経費額が明確になりますから、
そこに工夫が生まれてきます。
・使い回せる材料・資材はないか
・仕入れを最低限にする方法は
・もっと安い仕入先はないか
経費を安く抑える方法はいくらでもあります。
経営者の腕の見せどころです。
なぜ、利益を先に決めるのか
改めて、なぜ利益を先に決めるのかというと、「役員報酬(経営者給料)」は事業主の命を守るためのお金だからです。
利益(≒自分の給料)は、命銭。
毎日の生活はもちろんですが、事業を続ける気力・体力のためにも、
いつかあるかもしれない廃業のためにも、お金が必要です。
私は、小規模事業者にはできれば1000万円、最低でも500万円の給料を取ってほしいと考えています。
というのも、小規模事業の経営者には、ワーク・ライフ・バランスが成立しづらいからです。
本心は休息の時間、レジャーの時間を取ってほしいと思うのですが、生活のすべてが仕事に直結しています。
旅館を経営していた私の母は、
仕事の合間の食事で
「たまには休みでも」
と言われ、
「今休んでる」
と返事をしていました。
本気で、食事の時間を休息だと捉えていたのでしょう。
いまだに強く記憶に残っています。
そんな生活を送る小規模事業の経営者のみなさん、考えてみてください。
もし、今の事業をやめてアルバイトをするとしたら、時給はいくらぐらいを希望しますか?
知恵も経験も多いみなさんですから、時給1000円程度は最低ラインではないでしょうか。
では、みなさんの労働時間は今、何時間ぐらいでしょうか。
仮に15時間で330日働いているとすると、時給1000円で495万円になります。約500万円です。
みなさんの仕事は時給1000円以下でしょうか。これはほぼ最低賃金です。
違うはずです。経験を積み、地域に貢献し、連帯保証もしている。
もっと素晴らしい価値を生み出していると私は強く感じます。
現状、年収500万円以下の経営者は、時給1000円以下で働いていることになります。
これでよいのでしょうか。
最低でも500万円、できれば1000万円というのは、途方もない夢物語ではありません。
現実なのです。
それだけ、小規模事業の経営者は働いています。価値を生み出しています。
ぜひ、先に利益( ≒ 自分の給料 = 命銭 )を決めてください。
前回の記事 (第2回)
前々回の記事(第1回)
関連情報
https://seido-navi.mirasapo-plus.go.jp/supports/318
(制度ナビ)
日本政策金融公庫及び沖縄公庫による新型コロナウイルス感染症特別貸付
https://seido-navi.mirasapo-plus.go.jp/supports/149
持続化補助金
https://mirasapo-plus.go.jp/infomation/7381/
家賃支援給付金