大手企業OBのノウハウ・人脈で、電子ペーパーデバイスの販路を開拓【支援機関とともに 公的支援機関編】
全国には、都道府県や市町と連携して、中小企業の経営をサポートする公的な支援機関があります。公益財団法人 東京都中小企業振興公社もその一つです。同公社は、都内中小企業のための公的支援機関であり、創業から事業化(製品開発・販路開拓・助成金)、承継・再生まで、企業の様々な成長ステージの経営課題の解決をサポートしています。
今回の「支援機関とともに」では、「大画面電子ペーパーサイネージ」というユニークな製品を開発した企業が、大手商社・メーカー出身等のOBのノウハウ・人脈を活かして、製品の潜在市場を発掘・発見しながら、販路を拡大している事例をご紹介します。
認定支援機関 |
公益財団法人 東京都中小企業振興公社(東京都千代田区神田佐久間町1-9) |
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支援企業 | 株式会社クレア |
企業概要 | 教育機器、電子ペーパー製品等の企画、OEM、ODM製品の請負 |
所在地 | 東京都千代田区鍛冶町2-6-1 堀内ビルディング9階A室 |
WEBサイト | https://www.crea2007.co.jp/ |
大画面電子ペーパーサイネージ「EPS」の開発
株式会社クレアは、電子教材や電子玩具等の開発、設計、製造を請け負う企業である。取引先のアイデアを形にするOEMが業務の中心であり、自社の中国工場で受託生産を行っている。
2015年、子どもたちの目にやさしい、低消費電力という特徴をもった電子ペーパーの特性を活かして、手書きができる電子ペーパータブレットを開発した。さらに、電子ペーパーのサイネージ(電子看板)としての将来性と市場性を感じて、2018年7月、大画面電子ペーパーサイネージ「EPS」を開発。自社ブランド製品として、販売をスタートした。
デジタルサイネージの表示デバイスいえば、液晶やLEDのディスプレイが一般的である。しかし、電子ペーパーには他にはない様々なメリットがあると言う。
電子ペーパーの原理を簡単に説明すると、帯電性のある電子インクに電圧をかけて描画させるというものであり、イメージとしては紙の印刷物に近い。液晶やLEDはディスプレイ自体が発光して画面を表示するが、電子ペーパーは紙の印刷物のように外の光を反射して表示している。このため、太陽光の下でも画面をクリアに表示することができ、バックライトがないため目にも優しい。また、液晶やLEDとは異なり、一度表示した画面は電源を切っても消えない。このような特性から、電子書籍の表示デバイスとして利用されることも多い。
リットがあると言う。
くわえて、液晶やLEDなどと比較して圧倒的に省電力であることも、電子ペーパーの大きなメリットだ。
同社が開発した大画面電子ペーパーサイネージ「EPS」の特長としては、高精細・高視野角であること、大型のサイネージに対応していること、パソコン等とHDMI接続できることなどがある。
「電子ペーパーは高視認性や省電力という優れた特性があります。SDGsやカーボンフリー等の時流に合った製品だと考えています。(斉藤社長)」
このような電子ペーパーサイネージの市場性・将来生の高さについては、かなりの自信を持っていたが、開発当初は販路開拓が思うように進まなかった。
そんな時、東京都中小企業振興公社のビジネスナビゲータから問い合わせがあった。東京都の産業交流展に出展した「EPS」を見て興味を持っており、ぜひ一度会社を訪問したいとのことだった。そして、ビジネスサポーターから「中小企業ニューマーケット開拓支援事業」を紹介された。
「当公社には、60名のビジネスナビゲータが所属しています。ビジネスナビゲータは大手の商社・メーカーのOB等で構成され、豊富な営業経験や製品開発ノウハウ、蓄積された企業ネットワークで、中小企業の販路開拓を支援しています(高橋課長代理)」
将来性豊かな都内の中小企業を発見・発掘し、その成長をサポートしていくことも同公社の役割の一つであると、中小企業ニューマーケット開拓支援事業事務局の高橋課長代理は言う。
ビジネスナビゲータが、製品の販路開拓を支援
東京都中小企業振興公社は、東京都と連携して、都内中小企業をサポートする公的な支援機関である。その支援内容は、創業相談、経営相談、製品開発、販路開拓、助成金の活用など広範囲に及ぶ。
同公社の支援施策の一つに、優れた製品・技術をもつ中小企業の製品開発や販路開拓を支援する「中小企業ニューマーケット開拓支援事業」がある。
「中小企業ニューマーケット開拓支援事業は、優れた製品・技術を持ちながらも市場開拓に苦慮している企業を、ビジネスナビゲータの持つネットワークやノウハウを活用しながら支援するものです(高橋課長代理)」
中小企業ニューマーケット開拓支援事業に採択された製品・技術は、ナビゲータが2年間にわたり販路開拓をサポートしていく。
「ビジネスナビゲータの方からは、EPSの考えられる利用途や潜在的な市場について貴重なアドバイスをいただきました。いままでにビジネスナビゲータから、30社以上の企業・団体を紹介していただいています(斉藤社長)」
大手商社、大手小売、大手メーカーなど、様々な経歴をもつビジネスナビゲータの視点は、電子ペーパーサイネージの市場を発見するうえで、大変に有益だったと斉藤社長は振り返る。
EPSの製品特性を活かした販路の一つに、駅の案内板がある。電子ペーパーは明るい屋外でも視認性がよく、電源を落としても画面表示が消えないという利点をアピールすることで、駅の時刻表に採用された。
美術館・博物館も有望な販売先だった。電子ペーパーはバックライトが不要であるため、ディスプレイの光が鑑賞の邪魔にならないという利点から、作品説明等に採用された。
また、災害時に停電になっても表示が消えないという防災面での利点が評価され、公園・公共施設の案内板にも採用された。
その他、ビジネスナビゲータの人脈とアイデアにより、建築現場・寺社仏閣・病院・遊園地・駐車場など、幅広い分野で販路開拓を進めることができた。
自分が想像していた以上に、EPSには幅広い用途・市場があることが分かりました。ビジネスナビゲータの方々には非常に感謝しています(斉藤社長)
ビジネスナビゲータとの出会いにより、大画面電子ペーパーサイネージ「EPS」の可能性が広がったと斉藤社長は振り返る。
SDGs・脱炭素を追い風に、さらなる市場拡大を
「SDGsやカーボンフリーへの社会的な要請が高まるなかで、業種を問わず、様々な企業・団体で電子ペーパーへの興味・関心が高まっていることを肌で感じています。(斉藤社長)」
まだまだ同社の売上のなかで、EPSの占める割合は小さいが、確実に市場は広がっているとのことだ。
顧客層をさらに拡大するために、2021年01月、パソコンやスマホから簡単にサイネージに画像を配信するクラウド型配信管理システム「EPS SLIDE EDIT」を発表。システム開発にあたってはナビゲータからのアドバイスを受けながら、ものづくり補助金を活用した。また、今後はカラー電子ペーパーを採用した製品開発も進め、EPSの用途を広げていきたいと斉藤社長は言う。
「当公社は企業様の成長ステージに合わせた支援メニューがございます。今後、知財戦略や製品開発の助成事業等をご活用していただきたいと思います。」(高橋課長代理)
今後も、新製品に関わる知財戦略のアドバイスなど、幅広い支援を行っていきたいと高橋課長代理は語る。
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