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下請け脱却をめざして、自社ブランド工作機を試験場と共同開発【支援機関とともに 公的支援機関編】

地域資源
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全国には、都道府県や市町村、商工会議所や商工会、大学や研究機関と連携しながら、中小企業のものづくり・販路開拓・人材育成等を支援する公的な支援機関があります。北海道の道北エリアを管轄にする旭川市等が出資した一般財団法人旭川産業創造プラザもその一つです。

今回の「支援機関とともに」では、旭川市の老舗機械メーカーが、公的な支援機関の支援を受けながら、公設試験場が開発した新技術を活用して、自社ブランド製品として商品化。障害者の就労支援施設での加工機械で活用される他、展示会などの出展を通じて、様々な分野・用途に販路を拡大している事例をご紹介します。

旭川機械工業株式会社
認定支援機関

一般財団法人旭川産業創造プラザ(北海道旭川市緑が丘東1条3丁目1-6)

支援企業 旭川機械工業株式会社
企業概要 産業機械の開発・設計・製作・販売
所在地 北海道旭川市永山北3条7丁目1-11
WEBサイト https://www.asahikawakikai.com/外部リンクはこちら

林産試験場と連携し、自社ブランドの工作機を開発

旭川機械工業株式会社は、旭川市のものづくり企業である。昭和22年、水産加工機の製造からスタートし、部品加工や専用工作機等の開発・製造等を行ってきた。

しかし近年は、大手機械メーカーからの製造委託、図面をもらって機械をつくる「下請け取引」が中心になっていた。しかも、その下請け取引も取引先の撤退や廃業等が相次ぎ、「このままではじり貧になる」と、関山真教社長(当時は常務)は危機感を感じていた。

そんな時、関山社長の目に留まったのが、北海道立総合研究機構の林産試験場の技術チームが開発した木材加工技術だった。旭川市は「旭川家具」で全国に知られる木工のまちである。林産試験場では、チップソー(丸鋸)の高速回転と主軸の回転の2軸を組み合わせて、コンピュータ制御により複雑な3次元加工を可能にする技術を開発した。

関山社長

「この技術を使えば、誰でも思い通りに切削加工し、様々な木工品をつくることができます。脱・下請けをめざして、当社製品として商品化したいと考えるようになりました(関山社長)」

どこに商品開発について相談したら良いのかと考えた時、頭に浮かんだのが旭川産業創造プラザだった。知人の経営者から「困ったことがあったら、産業創造プラザに相談するといい」と言われていたからである。

産業創造プラザは、道北地域(上川・留萌・宗谷管内)の中小企業・個人事業者などの経営や創業をサポートしている公的な支援機関である。管轄エリアの面積は1万8,700平方キロメートルという広大なもので、管内の商工会議所・商工会、大学・研究機関、金融機関などと連携・協力しながら、中小企業を支援している。林産試験場も連携機関の一つだ。

中川コーディネーター

実は林産試験場でも開発した技術の実用化の方法を模索しているところで、関山社長からの提案は渡りに船でした。しかし、商品化のための開発費の捻出が課題でした(中川コーディネーター)

と語るのは、産業創造プラザの中川敏史コーディネーターである。同社のような資金力に乏しい中小企業にとって、開発費の負担は極めて大きい。開発にあたって、補助金・制度融資などの公的支援の積極的な活用をアドバイスした。

工場内

オフィス

独創的な技術が認められて、全国的な賞を受賞

2009年11月、同社は経済産業省の「地域産業資源活用事業計画(当時)」の認定を取得した。同計画の支援制度(補助金・融資)を活用して、林産試験場の技術を実用化した「3Dターニングマシン」を開発。1号機は島原市にある障害者が働く就業支援施設(社会福祉施設)に納入された。

同社の3Dターニングマシンは、一般的なNCルータ(切削器)と比較して、導入コストが安価であり、切削加工のスピードが速く、省スペースであることが特長だ。また、3次元CADの作図やデータ入力すれば、自動で木工切削加工ができるので、複雑な木工品をつくることができる。

関山社長

「マシンの開発当初から、障害者のものづくりに活用できないかと考えていました。設計にあたっては、障害のある方でも使いやすいように、ユニバーサルデザインや安全性を十分に考慮しました(関山社長)」

しかし、いままでにない技術を用いた機械だったため、当初はその特長がうまく伝わらず販売には苦戦した。産業創造プラザの支援を受けながら展示会に出展し、地道に3Dターニングマシンをアピールするとともに、顧客の声を聞きながらマシンの改善改良をすすめていった。

販路開拓に苦労するなかで大きな転機となったのは、2013年の「第9回新機械振興賞 機械振興協会会長賞」の受賞である。これは、機械工業技術の進歩・発展に貢献した企業・大学等に贈られる、全国的にも権威のある賞だ。

中川コーディネーター

「北海道の企業としては、初めての受賞です。同時に受賞したのは、自動車メーカーなど日本を代表する大手企業ばかり。地方の中小企業が受賞できたのは、まさに快挙でした(中川コーディネーター)」

受賞をきっかけに3Dターニングマシンがマスコミに取り上げられ、全国からの問い合わせが一気に増えた。それからは順調に販売台数を伸ばし、現在は就業支援施設だけでなく、家具、木製玩具、漆器等の幅広い分野の企業・事業者にマシンが導入されるようになった。

関山社長

「近年、中国などの低価格の海外木工品に押されて、国内の木工品の職人は減り続けています。このようななかで、3Dターニングマシンが木工業の盛んな地域の工業高校の教育用マシンとしても導入されています(関山社長)」

木工のまち、旭川市で開発された3Dターニングマシンは、日本各地の木工業を守り、継承していくための設備としても注目を集めている。

機械イメージ01

機械イメージ02

商品

旭川を代表するものづくり企業をめざして

2019年2月、旭川機械工業の三代目に関山社長が就任した。

産業創造プラザでは事業承継にあたって、経営課題や将来のビジョンを明確し、事業を円滑に引き継ぐための「事業承継計画」の策定をサポート。さらに「事業承継補助金」の活用により、設備投資や展示会出展もあわせて支援した。

関山社長

「いま当社では、3Dターニングマシンと並ぶ自社製品のもう一つの柱として『コーントル皮ネード(とうもろこしの自動皮むき機)』の販路拡大を進めているところです。将来は、国内にとどまらず海外にも販路を広げたいと考えています(関山社長)」

このような自社製品の開発販売に取り組むようになったことで、社員のモチベーションは大きく向上した。下請の場合は、発注先の図面通りに機械をつくり、納品するだけで、エンドユーザーとの接点はほとんどない。一方自社製品の場合は、展示会や納入先でユーザーの声、たとえばニーズやクレーム、感謝などを直接聞くことができ、それを改良・改善につなげていくことができる。実際にマシンを使うユーザーの顔が見えることで、ものづくりのやりがい・喜びを感じることができるのだと関山社長は言う。

関山社長

「当社の社名には『旭川』の文字が入っています。その名の通り、旭川を代表する機械メーカーとして誇りをもって働くことできる会社になることが私たちの目標です(関山社長)」

約10年にわたり同社の経営支援に関わってきた産業創造プラザの中川コーディネーターも、同社に期待を寄せる。

中川コーディネーター

「正直なところ、いま道北の製造業は様々な要因で苦戦されている企業が多々あります。このようななかで、同社が新機械振興賞をはじめ、ものづくりに関わる数々の賞を受賞したことは大きな励みになると共に刺激になりました。地域の中小企業の、製造業のリーダーとして、さらなる成長を期待しています(中川コーディネーター)」

2017年3月には、経済産業省の「はばたく中小企業・小規模事業者300社」を受賞。木工のまち、旭川市で開発された3Dターニングマシンは、日本各地の木工業を守り、継承していくための設備として、全国から注目を集めている。

現在は、コロナ禍もありなかなか企業訪問が難しい状況である。そのなかでも、オンライン相談などを活用し、できるかぎり多くの経営者の課題や悩みに向き合い、同社に続く企業を発掘・支援していきたいと中川コーディネーターは語る。

コーントル皮ネード

展示会

相談風景

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