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畳需要の減少のなかで、老舗畳店が補助金を活用し、売上拡大【支援機関とともに 商工会編】

補助金虎の巻
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「認定支援機関(経営革新等支援機関)」とは、国が経営の専門知識のある個人や団体を認定する制度であり、商工会・商工会議所、金融機関、税理士・社会保険労務士・中小企業診断士などの専門家が認定支援機関として登録されています。

今回の「支援機関とともに」では、100年以上の歴史をもつ老舗畳店が商工会の支援を受けながら持続化補助金を活用し、ターゲットと商圏を拡大。全国的な畳の需要減少のなかで、経営の安定と売上拡大につなげている事例をご紹介します。

堀田畳製作所
認定支援機関

中央市商工会(山梨県中央市布施1555-1)

支援企業 堀田畳製作所
企業概要 国産の畳表を中心とした畳の製作販売(一級技能士・畳ドクター)
所在地 山梨県甲府市上曽根町3662-31
WEBサイト https://www.hotta-tatami.com/外部リンクはこちら

畳需要が減少するなか、売上を伸ばす老舗畳店

堀田畳製作所は、山梨県甲府市にある大正2年創業の老舗の畳店である。現在、国内の畳に使われるい草の8割が中国産とされるなかで、同店は日本一のい草産地である熊本県の生産農家から直接仕入れ、国産のい草にこだわってきた。

同店の三代目となる堀田登喜夫店主は、この道37年の経験を持つベテランの畳職人。京都の有名畳店で修業してきた後継者の長男とともに、畳づくりの第一線で働いている。

堀田店主

「畳産業は『衰退産業』と言われることもあります。山梨県内でも、15年前に125店だった畳店が現在55店に半減しているのが実情です。(堀田店主)」

日本人のライフスタイルの変化とともに、全国的に畳の需要は年々減少しているのだと言う。

しかしこのようななかでも、同店は先進的な取り組みを続け、業績を伸ばしてきた。その挑戦を支えてきたのが、補助金の活用である。

そのきっかけとなったのが、平成26年の「小規模事業者持続化補助金」だった。持続化補助金は、小規模企業や個人事業者の販路開拓や業務効率化等の取り組みを支援する補助金である。会員である中央市商工会のセミナーに出席し、持続補助金の存在を知り、活用しようと考えた。

堀田店主

「平成26年の持続補助金では、畳店専用の顧客管理システムを導入しました。また販路開拓のために、当時は畳店では珍しかった新聞折込チラシなども実施しました(堀田店主)」

いままでは店主の頭のなかで顧客管理をしていたが、顧客管理システムを導入したことで、畳の種類やグレード、縁柄、価格などの販売履歴の管理も容易になった。販売履歴をもとに、お客様に最適な提案が行うことで、商談がスムーズになり、客単価の向上にもつながったと言う。

堀田畳店 いぐさ生産地

和室イメージ

顧客管理システム

持続化補助金を活用し、ターゲットと商圏を拡大

同店は平成26年に続き、平成29年、令和元年、令和二年、令和三年と計5回、持続化補助金を申請、採択された。

平成29年の持続化補助金では、新たな商圏への販路拡大を図った。平成26年に導入した顧客管理システムの顧客データを地図上で見ると想像以上に同店の商圏は広く、とくに幹線道路沿いに南北に広がっていることが判明した。この市場データをもとに、補助金を活用して、新たな商圏に新聞折込チラシを実施することとした。

また幹線道路沿いに商圏が広がっていることから、地域住民が商圏拡大の鍵を握っているのではないかと考え、畳店の存在を知らせるための「看板」を道路沿いに設置した。

堀田畳製作所 時計

令和元年には、水や汚れをはじく「オリジナル撥水防汚畳」の販路開拓のために持続化補助金を活用した。撥水防汚畳は、同店とい草生産者が共同開発を進めてきた製品であり、天然い草の畳でありながらお酒や料理をこぼしても汚れがつきにくいという特徴がある。

この特長を活かすために、飲食店や旅館などをコアターゲットとし、一件当たりの客単価が高い法人客の取り込みを図り、売上の拡大につなげた。

令和二年には、新型コロナウイルスの感染拡大により抗菌・除菌への意識が高まるなかで「抗ウイルス処理畳」の販路開拓に補助金を活用。老人福祉施設・介護施設をはじめ、衛生意識の高い法人・個人をコアターゲットに、抗ウイルス処理畳のチラシ作成、抗ウイルス畳PRのための電光看板を設置した

令和三年の持続化補助金では、ホームページに自動見積システムを設置。畳床の材質、畳表・畳縁の種類などを選択すると、自動的に見積シミュレーションを行うことができるというものだ。これにより、コロナ過での商談時間の短縮、接触機会の低減、顧客の利便性向上を図ることができると言う。

これらの持続化補助金については、中央商工会の経営指導員やアドバイザーが申請を支援してきた。その一人が、天野慎二経営指導員だ。

天野経営指導員

「畳店という古い体質の業界のなかで、同店は補助金を活用して、次々に新しい取組みに挑戦し、ビジネスチャンスを拡大しています。(天野経営指導員)」

同店は持続化補助金の活用にあたって、市場データに基づいて補助事業のターゲットを設定し、ターゲットのニーズにあわせた新製品(新サービス)により市場を拡大してきた。それが着実な成長につながっているのではないか、と天野経営指導員は語る。

畳撥水イメージ

堀田畳製作所Webサイト

次の世代へ、日本畳文化を継承していく

ライフスタイルの洋風化により畳の需要は減少しているが、堀田店主は畳業界の未来を悲観はしていないと言う。

堀田店主

「日本の伝統文化である畳は絶対になくなりません。たとえば、神社仏閣、日本料理店、日本旅館に欠かせません。その一方で全国の畳店の数は年々減少しており、県内畳店主の半数以上が65歳以上の高齢者というデータがあります。今後さらなる畳店の廃業が予想されますが、将来への経営ビジョンを明確に持ち、後継者のいる畳店にとっては、逆にビジネスチャンスが広がっているのと思います(堀田店主)」

持続化補助金の申請にあたっては、事業計画を策定してなくてはならないが、同店は商工会の経営指導員や専門家のアドバイスを受けながら、ターゲットや商圏を分析し、根拠のある数値目標を設定し、事業計画書に落とし込んでいった。これにより、将来ビジョンが明確になり、経営の安定につながったと堀田店主は振り返る。

また経営が安定したことで、事業承継の目途もたった。現在、もう一人の後継者である店主の次男も京都で畳職人として修業中。将来は長男・次男とともに、畳から和室全体のコーディネイトまで事業を拡大していくことも構想しているとのことだ。

天野経営指導員

「商工会として、同店への伴走型支援を継続するとともに、今後の事業承継や法人化などについても積極的にサポートしていきたいと思います(天野経営指導員)」

同店は畳業界という古い体質の業界で新しい挑戦を続け、経営の安定と成長につなげている。その成功事例を、地域の中小企業・小規模事業者の支援に活かしていきたいと言う。

相談風景

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