無農薬+天然活性剤で育てた野菜を強みに、商品開発【支援機関とともに 商工会議所編】
「認定支援機関(経営革新等支援機関)」とは、国が経営の専門知識のある個人や団体を認定する制度であり、税理士・社会保険労務士・中小企業診断士などの専門家が認定支援機関として登録されています。
今回の「支援機関とともに」では、無農薬・無化学肥料・天然活性剤で野菜を生産している企業が、商工会議所の支援を受けながら、「環境、健康、食育」をキーワードに天然活性剤と野菜の販路開拓、その野菜を原料にした加工品の商品開発・販路開拓等を進めている事例をご紹介します。
認定支援機関 |
中村商工会議所(高知県四万十市中村小姓町46) |
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支援企業 | 合同会社マル・シェリア |
企業概要 | 自社農園による野菜生産、加工品の製造販売、活性剤の製造販売 |
所在地 | 高知県四万十市名鹿432-2 |
WEBサイト | https://marchelia.jp/ |
優先順位を決めて、行動計画を策定
合同会社マル・シェリアは、四万十川の清流と緑深い山々の豊かな自然に恵まれた、高知県四万十市の会社である。四万十川の河口、土佐湾を望む岬の高台にある農園と工場で、無農薬野菜(人参、ショウガ、ニンニク、レタスなど)の生産や加工品(黒にんにく、粉ショウガ、冬虫夏草、清涼飲料水 など)の製造販売、農業活性剤の製造販売、カフェの運営を行っている。
同社の設立は、2019年9月。永島尚世社長が、20年以上前から親交があった「先代社長」から事業を譲り受けたことから始まる。
「先代社長は高齢のため、事業を継承する人を探していました。主な事業は、天然由来の活性剤を使った無農薬野菜の生産・販売です。四万十の自然環境と調和した、人にも地球にもやさしいビジネスで前から興味がありました(永島社長)」
四万十帯には数百万年前の海藻や藻・貝類が堆積した岩石層があり、この岩石のなかにはバクテリアの代謝活動から生じた有機酸(フルボ酸・フミン酸)が大量に含まれている。この岩石を特殊な製法で抽出したのが、同社の農業活性剤「フミンゲン」である。
事業のスタートにあたって、永島社長は中村商工会議所を訪れた。運転資金の融資について相談するためである。たが、事業内容等をヒアリングした井口和彦経営指導員は、融資の前に事業計画、行動計画を立てることが必要だと感じた。
「永島社長は事業意欲が旺盛な方で、次から次へとアイデアが沸きだしてきます。それは長所なのですが、やりたいことが多すぎてどれも消化不良になるのではないかと危惧しました。まずは事業の優先順位を決め、何をすべきかという行動計画を立てましょうとアドバイスしました(井口経営指導員)」
経営相談のなかで、まずは利益率の高い農業活性剤「フミンゲン」を最重点商品とし、農業関係者等に販売していくことに力を入れることとした。天然由来の農業活性剤「フミンゲン」の特徴・効能を広く周知することは、これを使った同社の無農薬農産物の差別化、さらにはその農産物を原料とした加工品の差別化にもつながる。
フミンゲン
農産物
新商品を開発して、地域の商談会に出展
次に取り組んだのが、同社が運営するカフェの売上拡大である。
農園に隣接する宿泊施設「山みず木」の内にあるカフェで、無農薬野菜・加工品の販売に力を入れるとともに、宿泊者を対象に無農薬野菜バーベキューセット、農園での収穫体験(グリーンツーリズム)など、新たな商品・新サービスの開発に取り組むことにした。
「私の場合は『やりたいこと・つくりたいもの』が先にあり、顧客の視点が欠けていることを、井口さんから指摘されました。カフェは販路が明確であり、顧客ニーズをつかむこともできるので、まずここからスタートしようと考えたのです(永島社長)」
「カフェ&マルシェは、テストマーケティングの場としても最適です。お客様の反応をもとに、商品のブラッシュアップにつなげることもできます。そしてある程度、商品が整ってきたところで、販路開拓のために『幡多商談会』への出展を提案しました(井口経営指導員)」
カフェでは、「しょうがパウダー」が好評だった。無農薬・有機肥料で育てた皮まで安心の生姜を粉末にした商品で、料理の隠し味やスイーツの原料、しょうが湯などのいろいろな用途に使えることが、人気の理由だ。
そこで商談会には、しょうがパウダー、桑茶パウダー、ゆず酢、発酵黒にんにくを出展することにした。
幡多商談会は、中村商工会議所をはじめ、近隣地域の商工会議所・商工会が共同で企画・実施する商談会である。商談会には、地域の製造業者・生産者等の「売り手」、飲食店・宿泊業者・小売店等の「買い手」の他、東京や大阪の大手バイヤー等の専門家も参加した。
「当社は、しょうがパウダー、桑茶パウダー、ゆず酢、発酵黒にんにくなどを出展。井口さんからは、商品企画書の書き方を丁寧に指導してもらいました(永島社長)」
バイヤー向けの商品企画書には、価格・納期などの条件、商品の概要、アピールポイントを1シートで簡潔にまとめる必要がある。「販路開拓の基本ツールだが用意していない事業者も多い」と井口経営指導員。商談会では、大手バイヤー等の専門家から商品のブラッシュアップなどのアドバイスも受けることもでき、販路開拓の基本知識や心構えを学ぶ場でもあった。
マルシェ
幡多商談会
環境、健康、食育をキーワードに事業を展開
2021年10月、同社は「持続化補助金」を活用して、加工品を保存するための「冷凍庫」、ショーケース型「冷蔵庫」を導入。冬虫夏草・マカを使った健康食品や、ゆずの皮やしょうがパウダーを使ったスイーツなど、新商品の開発と販路開拓を進めつつ、産直通販サイトでのインターネット販売もスタートさせた。
また、五感に届く「香るプロジェクト」という新たなプロジェクトもスタートさせた。
「無農薬・無化学栽培を続けた農園「土」と、その土で育った「野菜」や「香木」から、現代人の心身を癒す「香り」を作り出そうというプロジェクトです。香道の先生に監修していただき、様々な香りのラインナップをカフェでテスト販売しているところです。(永島社長)」
今後も、環境、農業、健康、食育などをキーワードにしながら、幅広い分野で事業を展開していきたいと語る。そんな永島社長に、井口経営指導員は大きな期待を寄せる。
「永島さんたちの事業は、SDGs時代のニーズに合致したものであり、いま国が進めるグリーン成長戦略にも重なる部分があると考えています。また四万十市の地域活性化にもつながる事業だと感じています(井口経営指導員)」
ただし可能性は感じながらも、組織体制・商品戦略・販売戦略などについての様々な課題が残っているとのこと。商工会議所として、今後も伴走型支援を続け、地域の中核を担う企業に成長してもらえればと語る。
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