創業時から、企業の成長ステージにあわせた支援【支援機関とともに 税理士編】
「認定支援機関(経営革新等支援機関)」とは、国が経営の専門知識のある個人や団体を認定する制度であり、税理士・社会保険労務士・中小企業診断士などの専門家や商工会・商工会議所、金融機関などが認定支援機関として登録されています。
今回の「支援機関とともに」では、認定支援機関である税理士が、創業時から販路拡大・資金調達など企業の成長ステージにあわせた伴走型支援を行ってきた事例を紹介します。
認定支援機関 | 税理士法人ハガックス(東京都渋谷区桜丘町28-6 芳賀ビル2F) ホームページ : https://www.hagax.com/ |
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支援企業 | 創業手帳株式会社 |
支援概要 | 創業支援ガイドブックの制作配布、創業支援WEBサイトの運営 |
所在地 | 東京都中央区京橋3-3-10 第1下村ビル6階 |
ホームページ | https://sogyotecho.jp/ |
創業に必要なノウハウをまとめて提供
創業手帳株式会社は、起業の時に必要なノウハウをまとめた、無料のガイドブック「創業手帳」の配布や、創業支援・経営支援のコンテンツを発信するWEBサイト「創業手帳」の運営などを業務としている。2014年、大久保幸世社長が35歳の時、「日本の起業の成功率を上げる」をミッションに立ち上げた会社だ。
「起業前、私はネットショップやECサイトの提供サービスをしている会社の役員をしていました。ネット通販をスタートする方には起業したばかりの方が多く、よく経営の相談を受けていました。よくよく聞いてみると、会社設立の手続きのことだったり、資金調達や税金のことだったり、みなさん似たようなことで悩んでいます。どれも調べれば分かることなのですが、地味な情報だったりするので、それをまとめたものが少ないのです。
創業に必要な情報を整理して、体系的にまとめて、起業する人に届ける仕組みを作ることができれば、新しいビジネスになるのではないかと考え、起業しました(大久保社長)」
大学時代からいつかは起業したいと思い、経営の勉強のつもりで会社員していた大久保社長にとって、起業は自然な流れだった。
創業期から、専門家のアドバイスを受ける
同社の創業期から、経営をサポートしてきたのが認定支援機関である税理士法人ハガックスの芳賀保則税理士である。
「創業直後、創業補助金の申請を支援しました。また、認定支援機関として、中小企業経営力強化資金の融資にあたって、事業計画の策定もサポートしました。(芳賀税理士)」
日本政策金融公庫の中小企業経営力強化資金の融資を受けるには、認定支援機関の助言・指導を受けながら、事業計画を策定する必要がある。
とくにスタートアップ期は、資金繰りや人材採用などで、いままで経験したことのない様々な課題にぶつかる。専門家のアドバイスを受けながら、事業計画を策定することで、経営の課題が明確になり、早めの対応が可能になる。
「起業家は独立心のある方が多いのか、何でも一人でやろうとする傾向があります。しかし、経営をしていると、自分だけでは解決できない課題に必ずぶつかります。それをサポートするのが、税理士などの支援者、商工会・商工会議所、金融機関などの支援者・支援機関です。創業時から支援者・支援機関と良好な関係を築き、いつでも相談できるようにしておくことは重要だと思います(大久保社長)」
円滑に創業し、事業を軌道に乗せていくためには、専門家の知識や経験に基づいたサポートが欠かせない。そう考えたからこそ、創業手帳も創業から専門家の支援を受けてきた。
また創業手帳自身も、スタートアップ期に欠かせない情報を提供することで、起業家をサポートしていきたいと言う。
成長期には、専門家の客観的な視点が有効
創業から現在まで、芳賀税理士は、毎月のミーティングに出席し、定期的に販路開拓・資金繰りなどのアドバイスや経営支援をしてきた。
「経営者は『会社を大きくしたい』という思いが強く、多少のことに目をつぶってもアクセルを踏みがちです。そんな時に、税理士の芳賀先生は、財務分析などの客観的なデータに基づいて、堅実で確度の高いアドバイスをしてくれる。たとえるなら、そっとブレーキを踏んでくれる感じでしょうか。会社を持続的に成長させるためには、アクセルとブレーキを上手に踏まなくてはなりません。さもないと、バランスを崩したり、事故を起こしたりしてしまいますから(大久保社長)」
順調に成長を続けている時こそ、専門家の冷静な客観的な視点が重要だと語る。
「支援者に求められるのは、経営判断のもとになる情報やデータを提示することだと思います。もちろん最終的な意思決定は経営者ですが、正しい経営判断の根拠になるものを示すことです。たとえば、ベンチャーキャピタルからの出資話にメリットだけでなくデメリットを伝えたり、急拡大をめざすのではなく資金繰りを考えて会社を着実に成長させるようにアドバイスしたりしてきました(芳賀税理士)」
このような支援者のアドバイスは、経営者にとって「精神安定剤」のようなものだと、大久保社長は言う。
「先ほどアクセルの話をしましたが、経営者は大きなストレスとプレッシャーのなかで、迷いながらアクセルを踏んでいます。支援者に経営について相談するなかで、自分の経営判断の根拠が明確になると、不安がなくなります。確信をもってアクセルを強く踏むことができるのです。(大久保社長)」
大久保社長
芳賀税理士
企業のステージあわせた支援
創業支援を通じて多くの起業家や経営者に出会った大久保社長は、成功している経営者の共通点をこう語る。
「逆説的な言い方になりますが、成功している経営者は失敗をたくさんしています。小さな失敗を通じて学びながら、経営者として成長し、大きな成長につなげているイメージがあります。経営の世界で、いつも満点をめざすのは難しいことです。すべてに完璧を求める人は経営者には向いていないかもしれません。というより、完璧主義者は不確定なリスクの多い起業なんかは、考えないかもしれませんね(大久保社長)」
「小さな失敗や細かなミスが致命的なものにならないように、専門家の視点からアドバイスしていくことも、私たち支援者の仕事ではないでしょうか(芳賀税理士)」
現在までに、創業手帳は内容のアップデートを続けながら累計180万部以上を発行。官公庁や市役所、金融機関、インキュベーション施設などの創業支援の現場で利用されているとのことだ。
「芳賀先生には、創業手帳のコンテンツのアドバイスもいただいています。日々、顧問先・支援先のことを考えて活動している支援者の方は情報の感度が違います。活きた情報を持っていますから、頼りにしています(大久保社長)」
最近、創業手帳の姉妹編として資金調達手帳、事業承継手帳なども発行。創業から事業承継まで、支援コンテンツの拡大に力を入れていきたいと大久保社長は言う。
「社長はアイデアが豊富で、様々な事業展開も考えています。月例のミーティングを軸に販路開拓・資金調達・補助金や助成金の活用など、様々な経営課題についての相談に乗りたいと思います。(芳賀税理士)」
同社の成長ステージにあわせた支援を、これからも続けていきたいと言う。