補助金の申請事例・ものづくり補助金③ ~ アレルギーに対応した給食用パンの製造 ~
ものづくり補助金は、「生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資」を支援する補助金です。
応募申請区分には、「ものづくり」と「サービス」の2つがあり、ものづくりは「ものづくり高度化法の12分野の技術」、サービスは「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」との関連性を示さなくてはなりません。
今回は、パン製造販売会社がサービスの区分で申請した事例をご紹介します。実際の申請書類を見せていただきながら、作成のポイントについてご説明します。
申請補助金 | 平成30年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 |
---|---|
補助事業 | 焼きたてパンの納入及びアレルギー対応パンや地元産品を使ったパンの開発 |
申請者 | 福田製パン合資会社 代表社員 江塚 隆 |
支援者 | 磐田市商工会 経営指導員 鈴木浩人 |
補助金交付額 | 10,000,000円 |
福田製パン合資会社
- 所在地:
- 静岡県磐田市福田中島783
- 電話:
- 0538-55-2586
目次
- 2.申請書作成のポイント
1.補助金導入のきっかけ
アレルギーに対応した美味しいパンを製造したい。
同社は、磐田市内の学校や福祉施設、企業等にパンを製造販売している。創業は昭和26年。先代が創業者で、現代表は2代目である。主力は、小中学校・幼稚園等の給食用のパンである。
学校給食用パンは利幅が薄く、生産効率が利益に直結するため、生産性向上が課題となっていた。また近年、アレルギーの子どもたちが増えており、アレルギーに対応したパンの製造も求められていた。
「学校給食パンは利幅の薄い仕事であり、撤退する企業も少なくありません。しかし、地域の子どもたちが、安心して食べられる美味しいパンを届けることは、私たちの社会的な責任だと考えています」
「社長からは、日頃より経営相談を受けており、新しいパン釜(新型オープン)を入れたいとの相談がありました」
2.事業計画書作成のポイント
学校給食の地域貢献面を記載
「1.企業概要」と「2.本事業取組の背景」では、売上の6割を占める学校給食を取り巻く事業環境について述べている。このなかで、地域企業が利幅の薄さから学校給食から撤退しつつあること、アレルギー対応パンを製造する事業者が少ないことを挙げた。そして、「児童・生徒に寄り添った食の提供」を、企業の社会的な責任と捉えて事業に取り組んでいることを記載した。
「補助金導入を考えるきっかけとなる、事業の背景を記載しました」
「ものづくり補助金の審査項目の『政策面』を意識しながら、地域貢献の面を強調することをアドバイスしました」
課題と事業効果を対応させる
「3.現状の課題」として、パン窯の焼き上げ工程がボトルネックとなり、①生産効率が低いこと、②アレルギー対応パンの製造が難しいこと、③保育園用の当日配送ができないことの3点を挙げた。その課題解決に対応する形で、補助事業の導入効果として、ア.生産リードタイムの短縮、イ.パン生地の窯伸びがよくなる、ウ.不良品率の低下およびコストの削減、エ.保育園用の当日納品を挙げている。
「新設備は生産効率ももちろんですが、きめ細やかな温度管理ができるため、卵やミルクを使わなくても、もちもちの触感のパンをつくることができます。アレルギー対応パンづくりには欠かせない機能です」
「現在の課題を、補助事業でどうやって解決していくのかという部分を対応させながら分かりやすく記述することが大切ですね」
事業効果とガイドラインとの関連性を示す
ものづくり補助金の応募申請区分には、「ものづくり」と「サービス」の2つがある。
ものづくり区分は、「ものづくり高度化法の12分野の技術」との関連性、サービス区分では「中小サービス事業者の生産性向上のためのガイドライン」との関連性を示さなくはならない。
今回は、サービス区分で応募申請したため、ガイドラインの中小企業の具体的な取り組みのうち、「新規顧客層への展開」「商圏の拡大」「独自性・独創性の発揮」「顧客満足度の向上」の4つについて事業効果との関連性について記載した。
事業目標は具体的な数値で記載
「5.事業の目標」として、(1)美味しさが増したパンや焼き立てパンの納入、(2)アレルギー対応パンのアイテム拡大、(3)新商品の開発(給食向けのアレルギー対応のソフトフランスパン・保育園向けの野菜パン・事業所向けシラス入りパンと海老芋パン)を挙げ、開発するパンの具体的な内容について触れた。
さらに事業目標と「その2:将来の展望」の「1.今後の戦略」と「2.販路の開拓」の整合するように、販路開拓先として学校・保育園・事業者ごとに、どのように販売していくかを記載した。
「4.売上計画」では、それぞれの販路に対しての売上目標の具体的な数値を記載して、事業計画の数値の根拠とした。
「補助金申請とほぼ同時に、長男が後継者として入社しました。ものづくり補助金を利用して設備投資をしようと考えたのも、事業承継の目途が立ったことが理由の一つです」
「地域では、後継者不足により、学校給食から撤退する業者もあります。後継者の入社により、事業計画に対する意識も高まったと思います。」
同時に、経営革新計画(販路に対応した、アレルギー対応パンの開発)の認定も受け、補助金の活用を事業承継に向けたステップの一つとした。
3.補助事業の効果
幼稚園・保育園からアレルギー対応パンの受注増加
平成30年12月、ものづくり補助金により、強加熱の新型オーブンを設置。令和元年度4月から本格的に稼働した。新型オーブンにより、1回に焼き上げる量が従来の1.5倍に、また焼き上げ時間も20分から15分へと大幅に短縮した。
アレルギー対応パンについても、温度管理の精度が高まったことから、卵・ミルクを使わなくてもふっくら焼きあがるようになり、幼稚園・保育園からの注文が大きく増えた。一部の園からは、アレルギー対応のパンでも十分に美味しいので、すべての園児の給食用パンをアレルギー対応パンに代えたいという注文をいただいたと言う。
「生産の余力が増えたため、事業所向けパン、店舗販売のパンにも力を入れることができるようになりました」
現在、シラス入りパン、海老芋パンなど、地域の食材を利用した新商品の開発にも取り組んでいるところだ。
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