補助金の申請事例・持続化補助金①
持続化補助金(小規模事業者持続化補助金)の申請に際して、事業者の方が苦労するのが、申請書の「経営計画書」と「補助事業計画書」の書き方です。
今回では、持続化補助金を利用された事業主の方とアドバイザーの方に、申請のきっかけ、申請書を書く時に気をつけたことをうかがうとともに、実際の申請書を見せていただきながら、申請書作成のポイントをご紹介します。
申請補助金 | 平成30年度 小規模事業者持続化補助金 |
---|---|
補助事業 | 高齢者対応のテーブルと椅子の導入による新たな需要掘り起こし |
申請者 | 藤枝はら喜鮨 代表 原木 広陽 |
アドバイザー | 藤枝商工会議所 経営指導員 曽根 健一 |
藤枝はら喜鮨
- 代表者:
- 原木広陽
- 所在地:
- 〒426-0025 静岡県藤枝市藤枝3丁目13−5
- 電話:
- 054-641-8208
目次
- 1.補助金導入のきっかけ ー シニア層の顧客獲得、法要ニーズの取込を狙う
- 2.経営計画書のポイント ー 周辺に寺社が多い立地の強みをアピールする
- 3.補助事業計画書のポイント ー 経営計画書からのストーリーを意識。
- 4.補助事業の効果 ー 高齢者だけでなく、女性客のランチ利用も増加
補助金導入のきっかけ
シニア層の顧客獲得、法要ニーズの取込を狙う
藤枝はら喜鮨の創業は、昭和45年。原木広陽氏は二代目で2005年に先代である父親の死去にともない代表となった。今回の持続化補助金では、シニア層の顧客拡大を狙い、2階座敷席に畳用のテーブルと椅子を導入した。
「近隣のお寺でも足の悪い方のために、椅子式の法要が増えています。以前、シニアのお客様を増やすために、椅子席が欠かせないと考えていました(原木代表)」
藤枝商工会議所の曽根経営相談員に、そのことを相談すると、持続化補助金を紹介された。
「原木さんにとって、はじめての補助金ということでしたので、分かりやすく丁寧なアドバイスを心がけました(曽根経営相談員)」
実は、当時の原木氏はパソコン初心者。まず操作方法を覚えるところから申請書づくりはスタートした。
経営計画書のポイント
周辺に寺社が多い立地の強みをアピールする
「原木さんに、最初アドバイスしたのは、自社の強みをしっかりアピールすることです(曽根経営相談員)」
持続化補助金では、販路開拓等の取組を補助の対象とするが、販路開拓の武器となるのが、「自社の強み」である。
「当店の特徴は、50代以上の中高年、なかでも女性のお客様が多いということです。また近隣に寺社仏閣が多く、法事ニーズが多い立地環境も強みだと考えました。経営計画書では、この2点をアピールするように心がけました(原木代表)」
このような自社の強みを明確にしながら、以下のように経営計画書の作成を進めた。
1.企業概要
企業の概要沿革や商品構成などを書く項である。原木氏は、企業紹介の冒頭に、江戸時代の東海道の浮世絵のイラストを挿入。歴史的にも寺社が多い環境を強調した。また企業概要に多くの写真を使うことで、お店の特長が伝わるようにした。
2.顧客ニーズと市場の動向
申請する補助事業「テーブルと椅子の導入」を念頭に置き、「宴会時に椅子を用意して欲しいという要望が多い」、「法事の宴席の選択基準に椅子席の有無がある」ことを記載し、とくにこの部分を赤字で記した。
3.自社や自社の提供する商品・サービスの強み
この項では、立地の強みを強調。高齢者利用が多い「藤枝市生涯学習センター」、近隣の総合公園「蓮華寺池公園」を写真で紹介した。
また、高齢者や女性が食べやすいサイズの手まり寿司の商品開発に触れ、ターゲットである中高年に向けた商品開発を進めていることを記載した。さらに、お客様の声として、googleのレビューを抜粋して掲載した。
設備面の強みとして、周辺すし店にはない「エレベーターの設置」を挙げ、足腰の悪い高齢者も2階への移動が可能なことを記載し、「テーブルと椅子の導入」効果が高いことを強調した。
4.経営方針・目標と今後のプラン
この項では、1年後の数値目標を記載。具体的な取り組み方法について記述した。
▼ 実際の経営計画書の抜粋
補助事業計画書のポイント
経営計画書からのストーリーを意識。
補助事業計画書は、補助事業の概要と効果、今後の進め方について述べるものである。
「経営計画書からのストーリーが補助計画書にきちんと反映されていることが重要です。このことを意識しながら作成するようにアドバイスしました(曽根経営相談員)」
曽根経営指導員のアドバイスを受け、以下のように事業計画書を作成した。
1.補助事業で行う事業名
事業名は「高齢者対応のテーブルと椅子の導入による新たな需要掘り起こし」として、ターゲットと実施内容を明確にした。
2.販路開拓等の取組内容
ここでは、寺社仏閣の多い立地面、エレベーターという設備面の強みを強調しつつ、テーブルと椅子の導入が2階座敷席の稼働率を上げ、売上増つながることを記載した。
また、今後のスケジュールとして、「テーブルと椅子の導入」を機とした販促活動について、毎月の販促テーマなど具体的に記載した。
3.業務効率化(生産性向上)の取組内容
テーブルと椅子の導入が、従業員の配膳の負担軽減、配膳の効率化につながることを記載した。。
4.経営方針・目標と今後のプラン
「高齢者が不便なく食事を楽しめる店」が大きなアピールポイントになること、「椅子席がないために取りこぼしていたニーズ」を取り込むことで、売上向上が見込めることを記載した。
▼ 実際の経営計画書の抜粋
補助事業の効果
高齢者だけでなく、女性客のランチ利用も増加
テーブルと椅子の導入により、法事宴席が以前よりも1割ほど増加。また2階席を椅子席にしたことで、女性客のランチ需要も大きく伸びたと言う。
「はじめての補助金申請ということで、分からないことだらけでしたが、曽根さんのアドバイスのおかげで、補助事業を実施することができました(原木代表)」
補助金もありがたかったが、補助金申請を通じて経営面のアドバイスをもらえたことが大きいと原木氏は振り返る。
「最初に原木さんと、補助金をもらうためだけでなく、これからの経営にも役立つ計画書をつくろうと話しました。補助金申請は、経営について考えるきっかけになります。持続補助金の申請を考える方は、商工会議所に相談に来てください(曽根相談員)」
申請前はパソコン初心者だった原木氏だったが、申請書作成を通じて、パソコンスキルを身につけ、販促チラシをパソコンで作成できるほどになった。補助金申請は思わぬ波及効果を産んでいる。
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