中小企業庁担当者に聞く 「令和7年度 小規模事業者持続化補助金(一般型(通常枠)・創業型)のポイント」
小規模事業者持続化補助金(持続化補助金)は、小規模事業者が「自ら経営計画を策定」し、地域の商工会・商工会議所の支援を受けながら、販路開拓などの取組を行う際に必要な経費の一部を補助する制度です。
持続化補助金は令和6年度補正予算事業で枠の整理などをしましたが、今回は制度のポイントについて、中小企業庁の担当者にお話をうかがいました。

小規模事業者が「自ら経営計画を策定」して行う、販路開拓等を支援
小規模事業者持続化補助金(持続化補助金)は、小規模事業者が「自ら経営計画を策定」し、商工会・商工会議所の支援を受けながら、販路開拓等の取組を行う際に、必要な経費の一部を補助する制度です。
対象となる小規模事業者は、常時雇用する従業員が、商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く。)は5人以下、それ以外(製造業等)は20人以下の事業者になります。
商工会・商工会議所は、「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律」に基づいて、小規模事業者の経営改善を支援しています。持続化補助金の申請にあたって、経営計画のブラッシュアップ、申請書類の確認、補助事業へのアドバイスなどを行います。言うまでもありませんが、持続化補助金は、商工会・商工会議所の会員のみならず、非会員も対象事業者です。また、持続化補助金は、機械設備、ウェブサイト制作、展示会出展など、幅広い経費が対象となっています。
インボイス・賃上げ特例で補助上限を引き上げ「持続化補助金(一般型(通常枠))」
令和7年度(第17回公募申請以降)から、持続化補助金(一般型(通常枠))は「卒業枠」「後継者支援枠」などの枠が整理されました。この改正は、制度の原点である「経営計画の策定と実行」に立ち返り、よりシンプルな制度設計を目指したものです。
補助上限については「インボイス特例」や「賃金引上げ特例」という条件付きの上乗せ制度が設けられています。補助上限は50万円ですが、インボイス特例(50万円上乗せ)と賃金引上げ特例(150万円上乗せ)をあわせて利用すると、上限が最高250万円に引上げられます。

持続化補助金(一般型(通常枠))の補助率と補助上限額
補助率 | 2/3 |
---|---|
補助上限 | 50万円 |
インボイス特例 | 50万円上乗せ※1 |
賃金引上げ特例 | 150万円上乗せ※2 |
※1)補助事業の終了時点で適格請求書発行事業者の登録を受け、かつ2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間で一度でも免税事業者であった事業者又は2023年10月1日以降に創業した事業者
※2)補助事業の終了時点において、事業場内最低賃金が申請時の事業内最低賃金より「+50円以上」であること。
開業後3年以内の事業者を対象とする「持続化補助金(創業型)」
「持続化補助金(創業型)」は、開業後3年以内の小規模事業者を対象とした補助金です。補助上限は最大200万円であり、開業間もない事業者に手厚い補助金となっています。
持続化補助金(創業型)の申請には、産業競争力強化法に基づく認定市区町村が発行する特定創業支援等事業の修了証明書が必須です。特定創業支援等事業の代表例としては、商工会・商工会議所や金融機関等が実施している「創業塾」や「創業セミナー」等があります。このような研修を受講し、経営・人材・財務・販路開拓の4分野にわたる知識・ノウハウを学んでいることが、申請条件となっています。

なお、特定創業支援等事業を受講後、認定市区町村から証明書の発行を受けることで、会社設立時の登録免許税の減免や日本政策金融公庫の新規開業・スタートアップ支援資金の金利優遇等の特典があります。創業する(創業を考えている)方は、ぜひご検討ください。
また、持続化補助金(創業型)の目的の一つとしては、創業塾や創業セミナーで学んだ知識を踏まえて創業計画や経営計画等を策定するところにあります。開業した後、持続的な経営を行っていくためには、自社の経営状況を把握し、今後の経営方針や収支計画を立てることはとても重要です。これまで計画書を策定されたことがない方は、この機会に自社と向き合い今後のビジネスプランを立ててみて下さい。
その他、持続化補助金(創業型)の審査にあたっては、新たな価値を生み出す商品やサービス等を有する取組、デジタル技術を有効活用した取組などにより、実現可能性の高い補助事業計画になっているかどうかなどが重視されます。また、「地域資源の活用」や「地域課題の解決」につながる取組等を行う計画については重点施策としての加点がなされます。
持続化補助金(創業型)の補助率と補助上限額
補助率 | 2/3 |
---|---|
補助上限 | 200万円 |
インボイス特例 | 50万円上乗せ※ |
※2021年9月30日から2023年9月30日の属する課税期間で一度でも免税事業者であった又は免税事業者であることが見込まれる事業者及び2023年10月18日以降に創業した事業者のうち、適格請求書発行事業者の登録を受けた事業者
※補助事業終了時点で一定要件を満たす必要があり、満たさない場合、補助金交付は行いません。
補助金申請にあたっての流れと注意事項
持続化補助金は、補助上限も比較的少額であり、商工会・商工会議所の支援を受けながら進めるものであることから、はじめて補助金を活用するという事業者もいらっしゃるかもしれません。ここでは、簡単に補助金の申請の流れについて、ご説明します。
「持続化補助金(一般型(通常枠)、創業型)」の申請の流れ
持続化補助金の事務局サイトで、最新の公募要領等を取得してください。公募要領をよく読みながら、「事業計画書(経営計画書)」を自ら作成します。作成にあたって不明な点については、地域の商工会・商工会議所にお問い合わせください。

商工会・商工会議所に事業計画を確認してもらい、「事業支援計画書」の発行を依頼します。事業支援計画書は、申請に必須です。発行依頼の期限は公募締切の10日前までとなっていますので、早めの相談をおすすめします。
「創業型」の申請には、市区町村が発行する「特定創業支援等事業証明書」が必須です。(申請から発行まで1週間~10日ほど要します)

必要な書類を揃えて、事業者の責任で申請します。申請は、電子申請システムのみで受け付けます。申請前に、GビズIDプライムのアカウントを取得してください(書類申請の場合は、取得までに1週間~10日ほど要します)

審査の結果、採択が決定されると「採択通知書」が送付されます。その後、交付申請のため、見積書等の必要書類を事務局に送付し、審査後に「交付決定」となります。補助事業は交付決定日から開始することができます。

補助事業の終了後、実績報告書等を提出し、審査後、補助額が確定してから、補助金が交付されます。補助金は「後払い」であることに注意してください。

補助事業の終了後から1年後の状況について報告書を提出します。
最後に、申請の注意点についてご説明します。公募要領の冒頭には「注意事項」が記載されています。補助金を不正受給すると、補助金の交付決定取消、返還命令の他、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処されることがあります。申請前に必ず一読してくだい。
特に留意していただきたいことは、コンサルタント等(商工会・商工会議所を除く。)の第三者支援を受ける場合です。提供するサービスの内容とかけ離れた「高額なアドバイス料金」を請求する業者にご注意ください。
また、第三者の支援については、支援料金の支払いの有無にかかわらず記載してください。第三者の支援を受けているにもかかわらず、相手方と金額の記載がない場合には、虚偽の報告として不採択・交付決定取消となります。

本年3月末に、第Ⅲ期の小規模企業振興基本計画が閣議決定されました。本計画の重点施策の一つに、商工会・商工会議所の経営指導員等による伴走支援を受けながら、自ら経営計画を策定して取り組む小規模事業者の販路開拓等への支援を講じることが定められています。
持続化補助金は、小規模事業者が自ら経営計画を策定し、地域の商工会・商工会議所の支援を受けながら、販路開拓等の取組を行う際に必要な経費の一部を補助する制度です。このことから、事業者が「自ら経営計画を策定する」ことに重きが置かれています。この趣旨をご理解いただき、事業のさらなる成長・発展のために、持続化補助金のご活用をぜひご検討ください。