担当者に聞く 令和5年度補正 ものづくり補助金「省力化(オーダーメイド)枠」とは
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業等が行う、革新的な製品・サービスの開発や生産プロセス等の省力化を行い、生産性を向上させるために必要な設備投資等を支援するものです。
令和5年度補正の予算の成立にともない、ものづくり補助金ではいくつかの点が変更になりました。
今回は、令和5年12月27日の第17次公募からスタートした「省力化(オーダーメイド)枠」について、中小企業庁技術・経営革新課に話を聞きました。
なお、次回は第18次公募からスタートする「製品・サービス高付加価値化枠」、「グローバル枠」についてご紹介します。
ものづくり補助金の基本要件について
はじめに、ものづくり補助金の基本要件について整理します。
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者(個人事業主を含む)等が行う革新的な製品・サービスの開発や生産プロセス等の省力化に必要な「設備投資・システム構築」等を支援するものです。
申請にあたっては、以下の基本要件を満たす「事業計画(3~5年)」を策定する必要があります。
- ①「付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)」を年平均成長率3%以上増加させること
- ②「給与支給総額」を年平均成長率1.5%以上増加させること
- ③「事業場内最低賃金」を毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準にすること
基本要件以外にも、申請枠・類型ごとに追加要件が設定されています。
ものづくり補助金は要件を満たしていても、「申請したら必ずもらえる」というものではありません。「採択時の事業計画審査」、「交付申請時の補助対象経費審査」、「事業完了後の確定検査」があります。
また、基本要件の②③が未達の場合は補助金の返還義務が生じます。
なお、ものづくり補助金の要件等は、公募回ごとに変更されることがあります。申請にあたっては、必ず「ものづくり補助金総合サイト」で最新の公募要領等を確認してください。
令和5年度補正予算 ものづくり補助金のポイント
令和5年度補正予算では、ものづくり補助金の申請枠・類型と補助上限額・補助率に変更がありました。ポイントは以下の4点です。
- ①革新的な生産プロセスやサービス提供方法の省力化を行う取り組みのための「省力化(オーダーメイド)枠」が新設されました。
- ②革新的な製品・サービス開発を行う取り組みのための「製品・サービス高付加価値化枠」として、通常類型と成長分野進出類型(DX・GX)の二つが設置されました。
- ③海外への販路開拓や事業拡大を目指す取り組みのための「グローバル枠」が、引き続き設置されました。
- ④大幅賃上げに取り組む事業者への特例も引き続き設けられ、省力化(オーダーメイド)枠については、補助上限額の上乗せ金額が最大2,000万円まで拡充されています(補助上限額8,000万円と合計で最大1億円支援)。
このうち「省力化(オーダーメイド)枠」は、令和5年12月27日の第17次公募から公募が開始されました。「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」については、追って第18次公募から公募開始の予定です。第17次公募に応募する事業者は18次公募には応募できませんので、ご注意ください。
詳細については、令和5年度補正予算 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金の概要でご確認ください。
● ものづくり補助金(第17次公募以降)の申請枠・類型と補助上限額・補助率
「省力化(オーダーメイド)枠」について
令和5年12月27日より「省力化(オーダーメイド)枠」の公募が開始されました。この申請枠は、「人手不足の解消等を目的とした生産プロセス等の省力化の取り組みを強力に支援」するためのものです。
近年、中小・小規模事業者の事業環境は、人手不足や物価高、賃上げ、デジタル・グリーン投資の高まりなど、多様化・複雑化しております。
一方で、足下の日本経済は、30年ぶりの高水準の賃上げが実現し、また国内投資は100兆円という過去最高水準の見通しとなるなど、大きな潮目の変化が生じており、30年続いてきたデフレから脱却できるチャンスを迎えています。
令和5年11月2日に閣議決定された「デフレ完全脱却のための総合経済対策」では、中小・小規模事業者の賃上げや人手不足解消のための省人化・省力化投資への支援が盛り込まれました。
ここれらのことを踏まえて、令和5年度補正予算で、「省力化(オーダーメイド)枠」が新設されました。
● 「補助上限額」は最大8,000万円
「省力化(オーダーメイド)枠」では、補助上限額が従業員数別に最大8,000万円に設定されました。
従業員数 | 補助上限額 |
---|---|
5人以下 | 100万円~750万円 |
6~20人 | 100万円~1,500万円 |
21~50人 | 100万円~3,000万円 |
51~99人 | 100万円~5,000万円 |
100人以上 | 100万円~8,000万円 |
●労働生産性向上等の「要件」が追加
「省力化(オーダーメイド)枠」では、それぞれの事業者のビジネスプロセスに応じたオーダーメイド型の省力化投資を強力に支援しますが、申請にあたっては、以下の追加要件を満たす事業計画(3~5年)であることが必要です。
- ①事業計画期間(3~5年)内に、設備投資実施前と比較して労働生産性(付加価値額/[労働人数×労働時間])が2倍以上になること。
- ②事業計画期間(3~5年)内に、投資回収が可能であること。投資回収年数は、「投資額/(削減工数×人件費単価)」で算出
- ③事業計画期間(3~5年)において必要な保守・メンテナンス措置を講じること
- ④事業資金について、金融機関等の資金調達を予定している場合は、金融機関の確認書を提出すること
追加要件の詳細については、公募要領で確認してください。
●「補助率」は投資金額等によって変動
補助率は補助金額、事業者の種別によって異なります。それぞれの事業者の種別の要件については、公募要領で確認してください。
補助金額が 1,500万円までの部分 |
補助金額が 1,500万円を超える部分 |
|
---|---|---|
中小企業 | 1/2 | 1/3 |
小規模・再生事業者 | 2/3 | 1/3 |
※例えば、従業員規模が21人以上で投資金額が3,000万円を超える場合の考え方は上図の通り。
●大幅な賃上げの上乗せ額の上限が2,000万円まで拡充
ものづくり補助金では、「大幅な賃上げ」により補助上限額が上乗せされます。要件は以下の通りです。
- ①給与支給総額を基本要件の年平均成長率1.5%以上増加に加え、更に年平均成長率平均4.5%以上(合計で年平均成長率6%以上)増加させること
- ②事業場内最低賃金を毎年地域別最低賃金+50円以上の水準とすることを満たし、さらに事業場内最低賃金を年額+50円以上増額させること
大幅な賃上げにより、補助上限額が上乗せされますが、「省力化(オーダーメイド)枠」では、上乗せ額の上限が他の申請枠が1,000万円まであるのに対して、2,000万円まで拡充されています。
大幅な賃上げの追加要件については、未達の場合は上乗せした補助金額を返還していただくことになりますが、「従業員のモチベーション向上のために、大幅な賃上げに挑戦しよう」と考えている事業者におかれては、ぜひ上乗せ支援をご利用ください。
従業員数 | 上乗せ補助額 | 補助率 |
---|---|---|
5人以下 | 250万円 | 各申請枠の補助率とする |
6~20人 | 500万円 | |
21~50人 | 1,000万円 | |
51~99人 | 1,500万円 | |
100人以上 | 2,000万円 |
●補助申請額が一定規模以上の場合、「口頭審査」を実施
「省力化(オーダーメイド)枠」では、補助金申請額が一定規模以上の事業者を対象に、オンラインで口頭審査を実施します。口頭審査では申請された事業計画について、事業の適格性、革新性、優位性、実現可能性等の観点について、事業者自身の理解度を審査いたします。
詳細の実施方針等に関しては、公募要領でご案内しておりますので、公募要領6-2口頭審査をご確認ください。
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