担当者に聞く「IT導入補助金2023」
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等が自社の課題にあった「ITツール」を導入する経費の一部を補助する補助金です。
2023年3月から申請の受付がスタートした「IT導入補助金2023」では、「通常枠」にくわえて、サイバー攻撃のリスク低減を目的とした「セキュリティ対策推進枠」、インボイス制度に対応したITツールの導入を支援する「デジタル化基盤導入枠」を設けています。
このIT導入補助金2023のポイントを、中小企業庁経営支援部技術・経営革新課の担当者にうかがいました。
IT導入補助金2023のポイントについて
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等のデジタル化・DXを支援する補助金です。補助対象は、ソフトウェアやアプリ、クラウドサービス等のITツールであり、導入にあたってのサポート費用や設定費用も含まれます。
補助金の対象となるITツールは、IT導入支援事業者(ITベンダー等)が、事前にIT導入補助金事務局の審査を受けて登録されたものに限られていますので、注意してください。また、IT導入支援事業者の協力・サポートを受けながら、補助金を申請いただきます。
2023年3月から申請受付が開始されたIT導入補助金2023には、「通常枠」「セキュリティ対策推進枠」「デジタル化基盤導入枠」という3つの枠があります。
「通常枠」は、業務効率化・売上アップのためのITツール導入をサポートするものです。IT導入補助金の最も一般的な枠だと考えてください。なおIT導入補助金2023では、通常枠(A類型)の補助額の下限が、従来の30万円から5万円に引き下げられました。安価なソフトウェアや複数年にわたるクラウドサービス(利用料最大2年分)等も補助対象となったことで、個人事業主の方も使いやすくなったと思います。
「セキュリティ対策推進枠」は、近年高まっているウイルス・不正アクセス・情報流出等のセキュリティリスクの低減を目的とした枠です。具体的には、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の「サイバーセキュリティお助け隊サービス」に登録されているサービスの導入にあたって、サービス利用料(最大2年分)を補助するというものです。
「デジタル化基盤導入枠」は、インボイス制度に対応した、会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECサイト等のITツールの導入をサポートするものです。IT導入補助金は原則としてパソコン等のハードウェアは補助対象外となりますが、デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型・複数社連携IT導入類型)については上記ソフトウェアの使用に供するパソコンやレジなども対象となるのが、大きな特徴です。
- (※1)消費動向等分析経費のクラウド利用料は、1年分が補助対象となります。
- (※2)補助額50万円超の際の補助率は、補助額のうち50万円以下については3/4、50万円超については2/3。
- (※3)(独)情報処理推進機構(IPA)「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されたサービス
補助金の申請前に、みらデジ経営チェックとSECURITY ACTION
IT導入補助金2023から、「みらデジ経営チェック」を事前に実施することが申請の要件となりました。
みらデジ経営チェックとは、中小企業庁のデジタル化支援ポータルサイト「みらデジ」にあるデジタル化・DXに向けた経営チェックツールです。ウェブサイト上で簡単な質問に答えるだけで、自社の経営課題や同地域・同業種の他社と比較したデジタル化の進捗状況等を確認することができます。
IT導入補助金を申請するためには、申請用のgBizIDプライムアカウントを連携登録したうえでみらデジ経営チェックを行う必要がありますが、みらデジ経営チェック自体は登録なしでも、無料で利用することができます。スマホからでも5分~10分程度でも簡単にチェックできますから、デジタル化・DXを検討している事業者の方は、いますぐ気軽にお試しください。
IPAの「SECURITY ACTION」の宣言(★一つ星または★★二つ星)も、IT導入補助金の申請要件になっています。
SECURITY ACTIONは、事業者が情報セキュリティ対策の取組目標を決めて、自己宣言する制度です。近年、中小企業・小規模企業へのサイバー攻撃が急増しています。これにより事業活動に深刻な打撃を受ける事例も報告されています。安全・安心なIT社会を実現するためにも、補助金の申請に関わらず、できるだけ多くの事業者の方に、SECURITY ACTIONのページを確認していただき、セキュリティ対策の取組に向けた宣言をしていただきたいと思います。
経営課題にあったITツール導入のために、専門家のアドバイスを。
IT導入補助金は、自社の「課題」や「ニーズ」にあった、業務効率化・売上アップにつながるITツールの導入を支援する補助金です。採択にあたっては、自社の経営課題を正しく把握しているか、課題に対してITツール・サービス等の導入効果がマッチしているかが審査されます。すべての申請が採択されて、補助金が支給されるわけではありません。
しかし、「自社の課題やニーズにあったITツールとはどんなものなのか」を、デジタル化・DXの知識があまりない事業者が判断するのは難しいことです。
このような事業者をサポートするために、デジタル化支援ポータルサイト「みらデジ」では、専門家による無料相談サービス「みらデジ リモート相談」を実施しています。中小企業診断士やITコーディネータなどの専門家が、みらデジ経営チェックの結果に基づいて、課題への対応策、支援施策の紹介、ITツールの導入アドバイス、IT導入補助金等の申請アドバスなど、デジタル化やDXに関する様々な相談に対応しています。また、よろず支援拠点等の国・県・市町村の公的支援機関、商工会・商工会議所などとも連携していますので、お気軽にご利用ください。
2023年10月現在、IT導入補助金に登録されているITツールの数は約9万件。このなかから、自社の課題・ニーズにあった業務効率化・売上アップにつながるITツールを探し出すのは大変です。経営改善につながるITツール導入のために、自社のデジタル化・DXにあたって、専門家のアドバイスを受けるのも一つの方法だと思います。
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