ペットが同伴できるカフェ店づくりで、集客力アップ【支援機関とともに 商工会議所編】
持続化補助金(小規模企業者持続化補助金)は、小規模企業や個人事業者の「販路開拓」等の取り組みを支援する補助金です。
事業者が策定した事業計画等に基づいて審査し、採択された事業者に補助金が支給されます。申請窓口は、事業者の管轄の商工会議所・商工会になっています。
今回の「支援機関とともに」では、商工会議所が、カフェレストランの創業にあたって、事業計画書や資金繰り表の作成、開業資金の調達、補助金の申請までを支援した事例をご紹介します。この事例では、持続化補助金(創業枠)を活用して、「ペット同伴できるテラス」を設置し、ターゲットの拡大と客単価の向上を図りました。その際の事業計画書を見せていただきながら、作成のポイント等をうかがいます。
申請補助金 |
第7回小規模事業者持続化補助金「創業枠」 |
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事業計画名 |
地域で先駆けとなるペットと食事を楽しめるレストランの顧客獲得 |
支援機関 |
恵那商工会議所(岐阜県恵那市長島町正家1-5-11) |
支援企業 | cafe brown sugar(カフェ ブラウンシュガー) |
企業概要 | 飛騨牛等の地元食材を活用したカフェレストラン |
所在地 | 岐阜県恵那市大井町2633-69 |
URL | https://www.instagram.com/cafe.brownsugar/ |
創業セミナーに参加し、事業計画を作成
Cafe brown sugar(ブラウン シュガー)は、恵那市街地から恵那峡へ続く「恵那峡ロード」沿いにあるカフェレストランだ。恵那峡は大井ダムの人造湖と奇岩で有名な景勝地で、週末には多くの人々が訪れる観光スポットである。
吉村富幸店主は、20年以上にわたり結婚式場やレストラン等で料理の腕を磨き、2022年1月に同店をオープンした。独立を決意したのは、新型コロナウイルスの影響で飲食店の客足が激減していた、飲食業が一番厳しい時期だった。
「新型コロナは飲食店にとって逆風でしたが、自分の将来を見つめ直す良いきっかけにもなりました(吉村店主)」
独立起業への決意を固めた吉村店主は、2021年8月、恵那商工会議所の「創業セミナー」に参加。全5回のセミナーで、市場調査や経営戦略について学び、開業のための事業計画を作成し、金融機関に開業資金の調達を申し込んだ。だが、融資について難色を示されてしまう。その理由を、後藤健司経営指導員はこう語る。
「コロナ禍での飲食店開業ということあり、金融機関も融資に慎重でした。当初の事業計画では店舗を新築する計画でしたが、そこまでの金額融資は難しいと言われてしまい、計画を変更することになりました(後藤経営指導員)」
ちょうどその頃、恵那ロード沿いにあるカジュアルフレンチ店が、店主の高齢化とコロナ禍により廃業し、空き店舗となっていた。20年以上にわたり盛業を続けていた店舗で、立地条件も良い。この空き店舗を改装してオープンすることで、開業資金を抑えることにした。商工会議所の支援を受けながら、吉村店主は事業計画を見直した。修正した事業計画が、金融機関から評価されて、開業資金を調達することができた。
2022年1月に店舗がオープンした。オープンしてすぐに「持続化補助金(創業枠)」を活用して、店舗に「ペットと一緒に料理が楽しめるテラス」を設置した。
地元食材を活用したメニュー等で差別化を図る
同店は、地域の食材を使った創作料理に力を入れている。なかでも、岐阜県のブランド和牛を使った「飛騨牛ハンバーグ」「飛騨牛ビーフバーガー」は看板メニューであり、恵那峡の観光客からの人気も高い。
「当店は、飛騨牛だけでなく、地元名産の三浦豚・恵那鶏、地元の野菜などを使った創作料理で、他店との差別化を図っています(吉村店主)」
地元の特色ある食材を使ったメニューに力を入れたのは、地域の人たちだけでなく、バイカーや観光客にもアピールするためで、景勝地の恵那峡へ続く「恵那峡ロード沿い」の立地を活かすことができると考えたからだ。
「創業セミナーを通じて、市場分析やターゲットを明確にした戦略づくり、他店との差別化が大切であることを学んだことが、ターゲットを意識したメニュー開発につながりました(吉村店主)」
またオープンにあたって、市場調査も実施した。知り合いの女性グループに競合店やニーズについてのアンケートを取ると、そのなかに「ペットを連れて食事やお茶に行きたい」という声があった。
調査してみると、商圏に設定した恵那・中津川・瑞浪地域には、ペット同伴で入れる店はほとんどない。一方、ペットを連れて恵那峡観光を楽しむ人を見かけることが増えてきた。ペット同伴ができる店舗をつくれば、ターゲット層が広がり、集客力が高まるのではないかと考えたが、開業資金に限りがあり、改装費用の捻出は難しかった。
「吉村さんから、ペットと一緒に食事が楽しめるペット同伴テラスを作りたいという話を聞き、面白いアイデアだと思いました。集客・販促につながる事業であることから、持続化補助金の活用を提案しました(後藤経営指導員)」
そこで、開業のための事業計画書をベースに「持続化補助金(創業枠)」の事業計画書を作成した。
このなかで、主なターゲットとして、ペット同伴者、バイカー、地域の人を設定。これらのターゲットのニーズに応えるために、地元食材を使ったメニュー、ペットと一緒に楽しめるメニュー、バイカー・観光客向けメニューを特長として挙げた。
また、顧客ニーズと市場の動向の項目には、アンケートの結果やペット市場データを掲載し、説得力を高めるようにした。
事業計画書は無事採択され、持続化補助金を活用して、ペット同伴テラスを設置することができた。
ペットと食事を楽しめるテラスで、客単価向上。
2022年6月、オープンから半年後にペット同伴テラスが完成した。テラスは、木の柵で周りを囲んだドッグランのような空間で、ペットと人間が一緒に食事を楽しむことができる。ペット同伴空間を完全に分けることで、ペットが苦手な方も安心して食事が楽しめるように配慮した。あわせて、ペット用のハンバーグ「ワンバーグ」や「ワンキントン」など、ペット向けのメニューも開発した。
「日本人の約12パーセントがペットを飼っているとのデータがあります。日本のペットの数は15歳未満子ども人口とほぼ同じだそうです。ペット同伴テラスをつくることで、ペット連れリピーターの獲得、ペットメニュー等の客単価の向上につなげていきたいと考えています(吉村店主)」
「ペット同伴テラスの設置に持続化補助金を活用しましたが、吉村さんが創業セミナーに参加して事業計画を作成していたので、補助金の申請書作成を短期間でスムーズに行うことができました(後藤経営指導員)」
補助金の申請のために事業計画を作成する「補助金ありき」では、経営改善にはつながりにくい。今回のように、はじめに市場分析・経営戦略に基づいた事業計画があり、その実現のために趣旨にあつた補助金を活用するのが本来の姿である。このような事例を今後は増やしていきたいとと後藤経営指導員は言う。
「現在、料理やイベント情報をInstagramで発信しています。地元のテレビ局でも、当店が取り上げられ、固定ファンも増えてきました。新型コロナも収束しつつあり、これからが本当の勝負です(吉村店主)
今後は、ペット同伴テラスの周知にも力を入れ、ペット同伴客の獲得、集客増・客単価の向上につなげていきたいと言う。
2023年9月7日
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