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事例から学ぶ!「新事業展開」

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グルーバル経済の進展、デジタル技術の進化などにより、いま事業環境はめまぐるしく変化しています。現在のビジネスが、この先も変わらずに続いていく保証はどこにもありません。企業が持続的に発展・成長していくためには、既存の事業分野にとどまらず、異なる事業分野や業種に挑戦していくことも必要になります。

このような新たな事業分野への進出「新事業展開」は、多角化から始まることがほとんどです。既存事業と並行しながら、異なる事業分野で事業を展開し、その後段階的に事業の軸足を新たな事業分野に移し、事業転換を図るパターンがよく見られます。

今回はミラサポplusの「事例ナビ」から新事業展開、多角化の事例についてご紹介します。

新事業展開 イメージ

多角化とは、新しい市場(顧客)に新しい製品を投入すること

経営学者のアンゾフは、企業の成長戦略を「製品」と「市場(顧客)」の2軸に置き、それそれぞれ「既存」と「新規」に分けたマトリクスで説明しました。それがアンゾフの「成長マトリクス」であり、①市場浸透戦略(既存製品×既存市場)、②新製品開発戦略(新規製品×既存市場)、③新市場開拓戦略(既存製品×新規市場)、④多角化戦略(新規製品×新規市場)の4つの成長戦略が示されています。

このうち、新事業展開にあたる④多角化は、「新しい市場(顧客)に対して、新しい製品・サービスを投入していく」という戦略になります。

このような多角化のメリットの一つは、経営リスクの分散です。事業環境の変化により、既存の製品・サービスの売上が減少しても、他の事業分野で収益を補うことができるため、経営が安定します。ビジネスモデルにも寿命があり、十年一日のようにビジネスを続けていけば、いずれ停滞・衰退していくことは避けられません。新事業展開や多角化は、企業のアンチエイジング、若返りに欠かせないものです。また、複数の事業を展開することで、単純な足し算以上のシナジー効果(相乗効果)が生まれ、既存の事業が活性化することもあります。

アンゾフは、成長戦略としての多角化を「水平型」「垂直型」「集中型」「集成型」に4つに分けました。ここでは、それぞれの多角化の事例についてご紹介します。

アンゾフの成長マトリクス

類似した市場に、新製品・新サービスを投入する「水平型」

水平型多角化は、既存事業と類似した市場、関連性の高い市場に、既存の経営資源やノウハウを活かして、新製品や新サービスを投入する多角化です。たとえば「電機メーカーがゲーム機を販売する」のようなケースが考えられます。既存と重なる顧客・既存と隣接した市場を、横に(水平に)拡大していくイメージです。

和歌山県の企業は、独自のスクリーン印刷技術を活用し、自転車やディスプレイ等に使われる転写ステッカーや携帯電話のカバーフィルム等を販売してきました。この技術を活用して、若い女性をターゲットにした転写ステッカー(ネイルシール、タトゥーシール)等を開発。ヒット商品となり、売上を伸ばすことに成功しました。

あらゆる素材に印刷できる技術を活用し、ネイルシール等の新製品を開発

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新たに開発した製品のうち、特に利益拡大に貢献したのが女性向け転写ステッカー(ネイルシール、タトゥーシールなど)である。携帯電話グッズに比べると市場は狭いが、日常的に消費される製品でもあり、安定的な収益が見込め、社内で一貫生産できる仕様にしたことから、高い利益率が確保できた。

水平型多角化は、既存の設備・ノウハウ・販路等を活用するため、シナジー効果も高く、比較的リスクが低い戦略です。上記の例(ネイルシール、タトゥーシール)でも、転写ステッカーで培った既存の技術ノウハウ、携帯グッズの販路などの既存の経営資源が活用されています。

中小企業も取り組みやすい多角化と言えるのではないでしょうか。

バリューチェーンの川上・川下に事業分野を拡げる「垂直型」

垂直型多角化は、既存の技術やノウハウとの関連性は低いものの、類似した市場に製品やサービスを投入する多角化です。バリューチェーンの上流(川上)や下流(川下)に事業を展開することから「垂直型」と呼ばれます。たとえば「繊維メーカーがアパレルブランドをつくる」ようなケースが考えられます。

大阪府の企業は、もともとは自動車部品等を運ぶ段ボールのメーカーでした。しかし、段ボール製造と並行して、部品の包装・梱包を中心とした庫内物流の請負事業は開始。現在では、資材の入出庫管理から梱包・包装、組立て、在庫管理まで、庫内物流事業を拡大しています。

「ハコ」から「ハコブ」へ事業領域拡大

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顧客の海外拠点新設や内製化により売上げの減少が見込まれる中、自社の事業領域を把握し、事業環境の変化に合わせて自社の持つ強みをいかし、顧客にどのような価値提供をするのかという観点で事業領域を見直し、顧客のニーズを掴むことで事業を拡大させている。

垂直型多角化は、バリューチェーンの川上・川下を取り込むことで、既存顧客のすそ野を広げ、顧客当たりの売上を増加させます。既存の取引先・関係先をターゲットにするため、短期間での事業拡大が可能です。しかし、新たな設備やノウハウが必要になることから、水平型よりもリスクは高くなります。また、既存の取引先との関係性が変わることもリスク要因です。経営資源に乏しい中小企業の場合は、当初は小規模からスタートして、できるだけリスクを抑えながら、徐々に事業を川上川下に拡げていくことを検討しましょう。

自社の強みを活かした商品を、新市場に投入する「集中型」

集中型多角化は、既存の経営資源やノウハウを活かした新商品・新サービスを、新しい市場・顧客に投入する多角化です。たとえば、「製薬会社が化粧品を開発する」ようなケースが考えられます。

佐賀県の温泉旅館では、「一泊二食」のビジネスモデルから脱却するために、サテライトオフィス事業をスタートさせました。テナントの誘致にも取り組み、賃料(リーシング事業)による安定収益の確保を図っています。

サテライトオフィス事業等により、安定した収益を確保

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利益率の低い「一泊二食」という従来型のビジネスモデルから脱却するため、自社が持つ2万坪に及ぶ広大な敷地という経営資源を活用し、サテライトオフィス事業を開始。入居企業と連携し、4社の入居企業が決まった。更に「泊まる→通う旅館へ」をコンセプトに、有名パティスリーショップなどのテナントを誘致し、地元客の需要の取り込みを進めている。これらの事業再構築の取組により、安定した賃料を確保することができ、同社の収益を下支えしている。また、同社の知名度も向上し、既存事業とのシナジー効果を感じている。

集中型多角化は、既存の設備・技術・ノウハウ等を活かして、新製品・新サービスを開発することから、事業化自体は比較的簡単です。一方で、従来とは異なる市場・顧客への販路開拓がハードルとなり、中小企業・小規模事業者にとっては難度が高い多角化とされてきました。

しかし近年は、インターネットの発達により、ホームページやSNSなどを通じて、中小企業でも異なる市場・顧客への情報発信ができるようになり、集成型多角化のチャンスは広がっています。これから、中小企業が自社の「強み」を活かした独創的なアイデアで新たな事業分野に進出する成功事例が増えるのではないでしょうか。

全く異なる市場での新事業を展開する「集成型」

集成型多角化は、技術・ノウハウ・市場ともほとんど関係のない事業分野に進出する多角化です。よくあるのが、大手企業が自社のブランド力(信用力・資金力)などを活かして、異分野に進出するパターンです。

経営資源に乏しい中小企業には、かなりハードルが高い戦略ですが、既存事業の先行きが不透明な場合は、このような多角化を進めなくてはならないケースも考えられます。

兵庫県の印刷会社は、住宅会社・不動産会社の広告チラシ等を制作してきましたが、近年は広告媒体の多様化により売上減少傾向にありました。そこで、ドローンの空撮写真やVR撮影を活用した新事業をスタートしました。

ドローンとVRによる新規事業に着手

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感染症の流行により、主体であった紙媒体広告の売上げが激減。非対面・非接触の告知方法が急増し、広告媒体の多様化が進んでいることを実感した同社社長は、商工会議所の支援も受けながら改めて事業計画書を作成。事業再構築補助金も活用しながら、ドローンの空撮写真やVR撮影を活用した新事業に着手。新事業を通じて、既に新たな顧客との取引も始まっており、今後の売上回復が期待されている。

この事例では、新事業の主な顧客が住宅会社であり、チラシ広告の顧客と重なっているため、経営資源の一部を活用できています。

異なる事業分野に進出する集成型多角化をスムーズに行う方法として、フランチャイズへの加盟やM&A(企業買収)があります。

岐阜県で食材に特化したECサイトを運営している会社は、地元に愛される豆腐店の事業を第三者承継して、豆腐製造販売という新事業を展開しています。

地元に愛される豆腐店の閉店を聞き、第三者承継を決意

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地元に愛されながらも感染症の影響により閉店を決断した豆腐店を第三者承継した。事業承継後は、社員が先代の店主から技術を習得しつつ、資金調達のためクラウドファンディングを実施。集まった資金を活用して、新商品開発や店舗のリニューアルに取り組むなど、事業の多角化に取り組んでいる。

この事例も、既存事業が食材に特化したECサイト運営であることから、一定のシナジー効果が期待できます。

集成型多角化と言っても、全く関連のない分野への事業展開は現実的ではありません。自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を分析し、できるだけ自社の強みを活かせようにすることが必要です。

新事業展開をサポートする補助金の活用

新事業展開には、新製品・新サービスの開発、新たな設備投資、販路開拓などの費用がかかります。このような新事業展開をサポートする補助金に、事業再構築補助金ものづくり補助金等があります。

事業再構築補助金は、ウィズコロナ・ポストコロナ時代の経済環境の変化に対応するために、中小企業等の新分野展開、業態転換、業種転換等の思い切った「事業再構築」を支援する補助金です。

ものづくり補助金は、中小企業等による生産性向上に資する革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する補助金です。

それぞれの補助金によって、求められる要件が異なりますので、詳細は各補助金の公募要領等をご確認ください。

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